先生の声
シリーズ宮城の地域医療・第1回 東日本大震災~東北大学病院・東北大学の取り組み~
平成30年11月18日、宮城県仙台市内において、宮城県医師会が主催する第7回 宮城県地域医療学会が開催されました。テーマは「東日本大震災から7年半~医療復興の現状と課題~」。ドクターサーチみやぎでは、「先生の声特別レポート」として、東日本大震災から7年半、宮城県内の地域医療に関わる各機関のこれまでの取り組みと、これからについてシリーズでお伝えします。

シリーズ1回目は「東日本大震災~東北大学病院・東北大学の取り組み~」。東北大学前総長であり、現日本学術振興会の里見進理事長による講演の概要です。

災害時の東北大学病院

震災当時は東北大学病院の病院長だった里見理事長。研究棟や外来棟、検査室、手術室などは大きな被害を受けましたが、病棟は新築だったため患者や職員は全員無事だったと言います。また、災害時の訓練も日頃から行っていたこともあり、早い段階で県内外の医療に対処できたということです。
東北大学としての取り組みは、主に4段階。
・第1段階は入院患者および職員の安全確保と緊急のトリアージ体制の確立
・第2段階が病院機能の復旧と仙台市周辺の医療機関への支援およびトリアージの継続
・第3段階として県内外の医療機関への支援強化
・第4段階は避難所への長期的な診療体制の整備と病院の正常機能への復帰
これらは、重複しながら実施されました。加えて、災害時対応として、医師らに専門医としてではなく、総合医として患者と向き合うよう周知徹底をしたということです。また、震災から約1か月後には臓器移植を実施し、それが、東北大学が本来の姿に戻った象徴的な出来事だったと話しました。

大震災からの教訓と課題

この大震災で知りえたこととして、里見理事長は、建物の耐震補強は効果的であったこと、日頃の訓練が役立ったことなどを列挙しました。
一方で反省点として、災害派遣医療チーム(DMAT)の整備はできたが、医療チームの秩序だった派遣ができていなかったことや、医療と介護が別々に動いていたことなどを挙げ、物資の備蓄やエネルギー自給能力の強化、通信・輸送手段の改善の必要性などを課題としました。

震災後の取り組みと人材育成の必要性

東北大学病院では、災害対応訓練として、女川原発事故を想定した緊急被爆医療対応訓練や、空港航空機事故対応訓練などを実施しています。里見理事長はそれらを担う人材の育成も強調しました。また、地域医療再興プロジェクトとして、東北メディカル・メガバンクや放射性物質を取り除く作業、汚染された農産物・水産物を見分けて取り除く作業などについて説明し、ここでも人材育成の必要性を繰り返しました。
 その他、震災一年後に立ち上げたNPO法人災害医療ACT研究所や、東北大学復興新生研究機構、東北大学災害科学国際研究所などについても紹介しました。東北大学では、地域医療をサポートする先端医療技術トレーニングセンターや東北大学先進医療棟、ユニバーシティハウスなどの設備も増やしてきているということです。
里見理事長は「災害は忘れないうちにやって来る時代となりました。東北大学が日本の復興や再生を先導してくれることを期待しております」とまとめ、この7年半に及ぶ産学官の支援への感謝の言葉で締めくくりました。

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第7回 宮城県地域医療学会
東日本大震災から7年半 ~医療復興の現状と課題~
日時:平成30年11月18日(日)
会場:勝山館(宮城県仙台市内)
主催:宮城県医師会
共催:宮城県地域医療協議会
後援:宮城県歯科医師会・宮城県薬剤師会・宮城県看護協会
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執筆者
ドクターサーチみやぎ事務局
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