ヘルスケアコラム
社会的な理解と支援が必要な認知症と統合失調症

記憶障害や妄想、幻覚などで社会生活を送ることが困難に

心の病のなかでも、認知症や統合失調症の患者は記憶が著しく障害されたり、妄想や幻覚などが見られるため、一人で通常の社会生活を送ることが困難です。したがって、介護や福祉の役割が重要となります。この点についてはかなり社会制度として整備されてきています。しかし、まだまだ不十分な部分も多く、一般の人たちもこれらの患者に対する理解を深めたり、患者ばかりでなく介護や福祉に携わる人たちも含めて社会的な支援をすることが必要です。ここでは最近、社会的に注目されている認知症と統合失調症について見てみます。

認知症は脳の病気食生活の改善、運動、禁煙で予防

正常であった脳の知的な働きが、何らかの病気によって持続的に低下した状態を認知症と言います。したがって、正常な老化に伴うもの忘れ(ボケ)とは異なり、脳の後天的な変化により起こる病気と考えることが必要です。認知症の原因となる代表的な病気にはアルツハイマー病と、脳梗塞などによって引き起こされる脳血管障害があります。がんなどと同様、認知症でも早期発見・早期治療が重要です。認知症の予防には、次のようなことが大切です。(1)食生活の改善(塩分・脂肪のとりすぎに注意)(2)適度な運動(3)禁煙(4)適度に脳などを刺激する(5)転倒事故、骨折などに注意する(寝たきりになりやすいので注意)(6)明るい気持ちで毎日を送る

薬物療法と心理・社会的な治療の併用で半数は回復する統合失調症

統合失調症は、およそ100人に1人がかかるとされる頻度の高い疾患です。幻覚や妄想といった症状のほかに、人と交流を持ちながら日常生活を営むことや、「自分の状態がおかしいかもしれない」と反省的にとらえることが難しいなども特徴として挙げられます。慢性の経過をたどりますが、新薬の開発や心理・社会的なケアの進歩により、ほぼ半数は完全かつ長期的な回復(長い間症状が出ない)が期待できるようになりました。治療は外来・入院いずれの場合でも、薬物療法と心理・社会的な治療(精神療法やリハビリテーションなど)を組み合わせて行われます。心理・社会的な治療だけでは効果が乏しく、両方を組み合わせると効果が上がることが明らかとなっています。特に幻覚や妄想が強い急性期には、薬物療法をきちんと行うことが不可欠です。また、病気の再発を防ぐために、回復後も抗精神病薬を飲み続けることが必要です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画