ヘルスケアコラム
医療機関で治療を受けると患者負担、月額3,900円強が長期に続く

高血圧性疾患の治療費2.8兆円、糖尿病の治療費1.9兆円

わが国における生活習慣病の有病者数は、高血圧症3,100万人、高脂血症3,000万人、糖尿病は要治療群740万人、予備群を含めると1,620万人と推計されています。一方、医療費は現在、治療を受けている患者だけ見ても、高血圧性疾患2.8兆円、糖尿病1.9兆円、脳血管疾患(脳梗塞やクモ膜下出血など)2.0兆円、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)0.8兆円、悪性新生物(いわゆる「がん」)2.8兆円に達するのです。

社会的費用(生産性の損失、早世による損失)は医療費よりも大きい

さらに、生活習慣病にかかると、通院や入院、合併症などによる労働生産性の低下、いわゆる社会的費用も無視できません。アメリカのある研究によれば、糖尿病だけを見ても、直接の治療費77億ドル、合併症などの治療費364億ドルに加えて、生産性の損失が371億ドル、早世による損失が170億ドルであるとしています。

月2回以上かかると1回ごとに追加料金

患者の治療費負担については、以下の2通りの場合があります。なお、患者の自己負担割合は、3歳以上69歳以下の方は医療費の3割、70歳以上75歳未満の方は医療費の1割(現役並の所得者は3割)となります。1つ目は、生活習慣病管理料を保険請求している医療機関で治療を受ける場合です。生活習慣病管理料には、1カ月あたりの診察・検査・投薬など診療にかかわるすべての費用が含まれています。高血圧、高脂血症、糖尿病でそれぞれ1,310点、1,460点、1,560点(1点は10円に相当)で、自己負担割合が3割(1割)なら、患者の自己負担額は月額3,900~4,700円(1,300~1,600円)程度となります。月2回以上受診した場合には、さらに1回につき数百円の追加となるのです。2つ目は、診察・検査・投薬ごとに保険請求を行う医療機関で治療を受ける場合です。高血圧、高脂血症、糖尿病の場合、特定疾患療養管理料225点に、再診料と外来管理加算の合計123点が加わります。高血圧の場合、標準的な降圧剤のカルシウム拮抗剤で1カ月分2,500円程度、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の新薬であれば1万円程度の薬剤費がかかることもあります。そのほか、心電図検査(150点)や血液検査(400点程度)の費用を要する月があります。その総計の3割(1割)が自己負担になりますので、やはり月額数千円の出費になるでしょう。生活習慣病では、これらの出費が長期間続くことになるので、患者の自己負担額も少なくありません。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画