ヘルスケアコラム

腸の周囲に脂肪がたまるタイプが動脈硬化性疾患を起こしやすい
脂肪は量ではなく、どこについているかが問題
食生活の欧米化や運動不足で、わが国の肥満人口は若い女性を除いて増え続けています。さらに、軽度の肥満でも糖尿病、高脂血症、高血圧や狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化の病気を起こしやすいという特徴があります。脂肪量ではなく、どこに脂肪がついているのかが問題なのです。
内臓脂肪は男性が加齢とともに、女性は閉経後に増加
大阪大学でCTスキャンを用いて脂肪分布と病気との関係を調べたところ、皮下脂肪がたまる皮下脂肪型肥満に比べ、腸の周囲に脂肪がたまる内臓脂肪型肥満※では糖尿病、高脂血症、高血圧や動脈硬化の病気を合併することが明らかになりました。これが、メタボリックシンドロームです。内臓脂肪の量は男性は年齢とともに増えていき、女性では閉経前は増えにくいのですが、閉経後は男性同様に増えていきます。これは、女性も閉経後は動脈硬化※の病気を起こしやすいことを示します(図1)。長寿国のわが国では、脳梗塞になって寝たきりの状態で過ごす年月も長い傾向にあります。元気で長生きするためにも、内臓脂肪を増やさないようにしなければなりません。
ウエスト周囲径が男性85㎝以上、女性90㎝以上で内臓脂肪型肥満
内臓脂肪の量はCTで測るのが望ましいのですが、日常的にはウエスト周囲径(腹囲)から推定します(図2)。内臓脂肪がたまっていると判断する基準は男性85㎝以上、女性は90㎝以上です。女性のほうが大きいのは、皮下脂肪がたまっていることが多いためです。ただし、20歳のころに比べ体重やウエスト周囲径が増え、血圧や血糖値、脂質値などに異常がある場合には、ウエスト周囲径が基準以下でも内臓脂肪がたまっていると考えたほうがよいでしょう。
体重5%減量で内臓脂肪は約20%減
カロリー、特に糖分のとりすぎ、運動不足は内臓脂肪がたまる大きな原因です(図3)。厚生労働省の調査から内臓脂肪型肥満の方でよく見られる特徴は、「満足するまで食べる」「甘いものが好き」「野菜が嫌い」「間食をよくする」「運動量が少ない」「喫煙習慣がある」でした。内臓脂肪を減らすには、生活習慣のなかでこれらのことに留意する必要があります。禁煙によって一時的に太ることがありますが、増えるのは主に皮下脂肪と言われています。内臓脂肪は非常に減りやすい性質があります。わたしたちの調査でも、体重の5%程度の減量で内臓脂肪は約20%減り、高血糖、高脂血症、高血圧などの改善を認めました。まず体重3㎏減、腹囲3㎝減を目標にした無理のない減量を行ってください。

【引用・参考文献】
総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画
総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画