ヘルスケアコラム

薬物療法と心理療法の併用がポジティブ志向をつくりだす
パニック障害やPTSDなど不安障害の種類はさまざま
不安障害にはパニック障害、社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害、外傷後ストレス障害(PTSD)など、多くの病気が含まれます(表1)。これらのうち、いくつかの病気が重なって起きることもあります。また、うつが重なることも少なくありません。
不安の回路を修正する効果の高い抗うつ薬で治療
薬物療法では、いずれの不安障害に対しても、脳内の神経伝達物質のアンバランスを調節することで不安の回路を修正していく効果のある向精神薬を用います。なかでも副作用が少ないとされる、抗うつ薬のSSRI(『うつ病の薬物治療」参照)(6_8.txt)が、現在の薬物療法の主流になっています。SSRIは効果が現れるまで数日~数週間と時間がかかるので、続けて飲むことが大切です。さらに、ぶり返しを予防するには、修正された回路をしっかり発達・強化させるために、良くなってからもしばらくは十分な量を続けて飲み、やめるときは少しずつ量を減らしていく必要があります。SSRIが効くまでの間、より即効性のある抗不安薬(安定剤とも呼ばれる)が使われることもあります。SSRIの登場前はこの薬が多用されていましたが、不用意に長期間飲み続けると効きが悪くなったり、やめにくくなってしまうこともあるため、最近では補助的に使うようになっています。
非建設的な考え方を改める認知行動療法も治療効果を上げる
不安障害に対しては薬物療法以外に、不安を感じるような状況に自ら身を置き不安を克服していく暴露(ばくろ)法や、不安レベルの低いものから徐々に挑戦して慣らしていく系統的脱感作(だっかんさ)法などの行動療法、従来の非建設的な考え方や行動などのくせを修正する認知行動療法といった治療法があります。後者の場合、患者は治療者と話をしながら自らの非建設的な感じ方や考え方のくせを知ることで、その理由を考えたり、患者自身がより建設的な新しい考え方を探してそれに基づく行動をとれるようにします。初めは薬に手伝ってもらい、強い不安を軽くし「安心の回路」を使いやすい状態にしたうえで少しずつ行動を起こし、大丈夫であることを確認しながら心理療法を進めれば、徐々に自分の力で安心の回路を回せるようになります。すると、症状が起きないから行動ができる、行動できるから自信がつき、さらに症状は起きにくくなる、という良い循環に入っていきます。このように薬と心理療法を併用すると、片方だけで治療するより効果が上がり、ぶり返しも少なくなることがわかっています(図1)。

【引用・参考文献】
総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画
総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画