ヘルスケアコラム
動脈硬化性疾患は男性で40歳以降、女性で閉経後から増加

就労率の違いによる生活習慣の男女差

生活習慣病は、遺伝的な体質と良くない生活習慣(食習慣、運動習慣、ストレス、タバコ、アルコールなど)が積み重なり発症します。特に高血圧、高脂血症、糖尿病は発症頻度も高く、これらが危険因子となる心疾患、脳血管障害は肥満、メタボリックシンドロームとの関連もあります。
生活習慣に関する性差では主に就労率の違いから、飲酒習慣、喫煙率、外食の頻度が女性で少なくなっています。一方、主婦、パートタイム勤務の女性には健診・検診を受ける機会が少ないという問題もあります。肥満者の割合の変化は男性では年代とともに増加していますが、50歳代までの女性ではやせ型信仰のために減少し、60歳代以降では男性同様に増加傾向にあります(図1)。

男性と閉経後の女性は内臓脂肪に注意

心疾患、脳血管障害などの動脈硬化性疾患の発症数は、男性では40歳代以降直線的に増加しますが、女性では閉経後から増加し、男性に追いつき始めます。これには主に、女性ホルモンの抗動脈硬化作用が関係しています。男性では生活習慣も関係し、体重・ウエスト周囲径が増加するころから高脂血症、高血圧、糖尿病、肝障害が徐々に増加します。女性では閉経による女性ホルモンの低下後、コレステロールが増加し、高脂血症の頻度が急増します(図2)。
脂肪分布にも性差があり、男性では悪玉の内臓脂肪が多く、女性は閉経後に内臓脂肪がたまりやすくなります。脳血管障害、心疾患発症後の入院期間は女性のほうが長くなっています(図3)。

女性にとってより危険な糖尿病や喫煙、飲酒

動脈硬化性疾患の危険因子は、重複するほどその危険度が増加します。特に糖尿病、喫煙は同一の危険因子でも女性で危険度が高く、閉経前の女性も含めて、数倍危険度が高まります(図4)。心疾患の症状が女性で非典型的であること、発症後の経過、治療薬の効果などにも性差があることが少しずつ報告されています。
近年、就労率の上昇などのため、若い女性の喫煙率の上昇、飲酒習慣のある女性の増加など生活習慣に変化が生じています。喫煙は卵巣機能に悪影響を与え、不妊率の上昇や閉経が数年早まることなどが知られています。飲酒による肝障害の出現、アルコール依存状態になるまでのアルコール量は、女性のほうが少ないことも知られています。有効な生活習慣の改善方法は共通です。性差に加え、加齢変化もありますので、より良い生活習慣をいち早く獲得することが大切です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画