ヘルスケアコラム
抑うつ気分と興味や楽しさの喪失 食欲減退、睡眠の乱れなども

気分が落ち込み、好きなことも面白いと感じられなくなる

うつ病になるとさまざまな症状が現れますが、「抑うつ気分」と「興味や楽しさの喪失」の2つが中心的な症状です(図1)。抑うつ気分は、気分が沈む、落ち込む、憂うつ、希望がない、とても悲しい、などといった気分です。
興味や楽しさの喪失は、これまで好きで熱心にやってきたことに関心をなくしたり、面白いと感じなくなることです。サッカーが大好きでテレビ中継を欠かさず見ていたのに急にやめてしまったり、いつも身だしなみを気にしていた人が服装など外見を気にしなくなったりします。
医師が患者さんをうつ病と診断するときには、これら2つの少なくともどちらかの症状が生じていることが基準になっています。

頭痛や胃腸症状、息苦しいなど身体症状が脈絡なく現れることも

また、よく見られる症状として食欲の減退、睡眠の乱れ、動きが遅くなる、疲れやすい、過度に自分を責める、集中力の低下などがあります。病状が重くなると、自分の死という考えが症状として出てくることもあります。
気持ちの面だけではなく、うつ病からさまざまな身体の不調が生じることもあります。よく見られる症状としては頭痛、肩こり、腰痛、下痢や便秘、汗をかく、だるい、息苦しいなどが挙げられます。「不定愁訴」と言いますが、そういったいろいろな種類の体調不良が、脈絡なくバラバラに現れることが少なくありません。

なかなか気づきにくい病気であることに注意が必要

うつ病は、本人にも周囲にも、なかなか気づきにくい病気です。まず、上で挙げたような身体症状が目立つと、それに目を奪われて、精神的な問題が見逃されてしまうことがあります。そうした状態を、うつ症状が身体症状という仮面に隠されているという意味で「仮面うつ病」と呼ぶことがあります。
また、気分が沈む、やる気が出ないなどといった精神面のことは、「気のせい」「そのうちよくなる」と思われてしまいがちで、なかなか健康上の問題という認識に至りません。
さらに、つらい気持ちからイライラがつのったり、怒りっぽくなったりして、周囲の人たちと摩擦やトラブルが起きてしまうこともあります。そういった行動面の問題が出てくると、「機嫌の悪い人」「イヤな性格」などと思われて、病気のことがその陰に隠れてしまいがちです。
原因不明の体調不良が重なる。意欲の低下や楽しくない気持ちが続く。周りの人たちとの行き違いが増えた。そうしたときに、ストレスがたまっていないか、何か気持ちの重荷になっていることはないかと、最近の自分を振り返ってみると、精神面の健康に役立つことがあります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画