ヘルスケアコラム
脳神経機能の変調を薬で調節し、つらい症状を改善する

薬で症状を緩和。ものの見方を整理し、生活環境を整える工夫も

うつ病の治療は現在、抗うつ薬による治療が中心になっています(薬物療法)。また、医師や心理職など専門家と患者さんが話し合い、考え方や気持ちを整理することによって、つらい気持ちをやわらげることができます(精神療法)。
加えて、うつ病は精神的なエネルギーが低下している状態ですので、心身を上手に休ませることが大切な「治療」になります。そうした意味で、職場や家庭などでのストレスをやわらげたり、場合によっては環境を変えていったりすることが役立ちます(環境調整)。
患者さんの病状や条件に応じて、このような方法を適切に組み合わせながら、うつ病の治療を進めていくことになります。

現在はSSRI、SNRIが主流 三環系・四環系抗うつ薬も

気分が落ち込む、やる気が出ない、楽しさを感じられないなどといった気分や感情は、脳内の神経機能の変調に関係していることが、脳科学の進展によってわかってきました。そうした変調を調節して、うつ病のつらい症状を改善するのが、抗うつ薬の役割です。
私たちの脳の働きは、約1,000億個の脳神経のネットワークが情報を伝達し合うことによって成り立っています。うつ病のときには、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きに変調が生じていると考えられています。
現在よく使われる抗うつ薬には、新しいタイプの「SSRI」「SNRI」や、従来から長く使用されてきた「三環系・四環系抗うつ薬」があります(表1)。SSRIはセロトニンだけに作用し、SNRI、三環系・四環系抗うつ薬はセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用します。

自己判断で薬を減量したりせずに症状が消えても一定期間服用する

抗うつ薬を飲むときは、医師の指示による使用法と分量を守ってください。薬の効果が現れるまで個人差がありますが、2~3週間かかります。すぐに効果が出ないからと、飲むのをやめてはいけません。また、症状が軽くなったときなどに、自分の考えで量を減らしたり、服用を中止したりするのもよくありません。かえってうつ病が長びくおそれがあります。
抗うつ薬は少なめの量から始めて、経過を見ながら、副作用が強くなりすぎない範囲で、効果が現れるように分量を増やしていくのが基本的な使い方になっています。
症状が消えてからも、半年から1年、場合によってはそれ以上の期間、抗うつ薬をのみ続けます。うつ病は長びいたり、再発したりする可能性のある病気です。慢性化や再発を防ぐために、気分が安定したあとも、抗うつ薬を適切な期間飲み続けることが大切です(図1)。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画