ヘルスケアコラム
「3つのC」を手がかりにして、硬直した思考パターンを見直す

行き違いや摩擦を恐れすぎずに人間関係をスムーズにする工夫を

私たちは日々の生活の中で、さまざまな判断や行動を選択して、その時々の状況に対処しています。しかし、うつ病になった人は何でも悲観的に決めつけたり、よくない可能性ばかりを考えてしまったりするようになりがちです。
そのように狭く硬直的になったものの見方・考え方にアプローチして、柔軟な思考を取り戻すことを通じて、うつ病のつらい症状が改善することがわかっています。そのヒントになる着眼点を「3つのC」(表1)と私は呼んでいます。
1つめのCは、コミュニケーション、人間関係です。うつ病の人は自分のことも他人についても否定的に考えて、殻に閉じ込もり、他人とうまく関われない傾向がありますが、人間関係をスムーズにするコツを意識的に「練習」することによって、改善できることがあります。
たとえば、(1)ありのままの自分をできるだけ受け入れる、(2)他人の「いいところ」に目を向ける、(3)行き違いや摩擦はコミュニケーションを深めるチャンスと考える、(4)パーフェクトな人間関係を求めすぎないように心がける、などといったところから始めてみるといいでしょう。

現在の問題点を明らかにして具体的な解決策を考える

2つめのCは、コントロール感覚です。私たちは、好きなことに夢中で取り組んだり、自分から次々と何かを追い求めたりしているときにはかなり頑張りがききますが、状況に振り回されている、達成感が持てないなどと感じるようになると、つらい気持ちが増してきます。
コントロール感覚を取り戻すには、いま自分が直面している問題を明らかにし、解決策を考え、実行するといったプロセスを、なるべく具体的にたどってみることが役立ちます。また、折に触れて、自分がこれまでやってきたことの意味を振り返ったり、仲間と話し合ってみたりするのも、大切なことの一つです。

悲観的・否定的な思考を修正し柔軟なものの見方を取り戻す

3つめのCは、ものの見方・考え方。英語でコグニション(認知)と言います。
うつ病の人は、いろいろな事柄を自動的に悲観的に決めつけたり、否定的な可能性ばかりを思い詰めたりする傾向があります。そうした不適切な思考パターンを修正し、より現実的なものの見方ができるようにするアプローチとして、「5つのコラム法」(表2)が知られています。
適当な紙に、「状況」「そのときの感情」「自動思考」「別の考え」「気持ちの変化」という5つの欄を作り、記入しながら、自分がつらい気持ちになったときのことを振り返ってみます。
このような練習を通じて、狭く固まったものの見方・考え方に柔軟さが戻ってきます。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画