ヘルスケアコラム
目的に合った運動を“ややきつめ”に継続して行うのがポイント

体力にもさまざまな要素 日常生活に必要な健康関連体力

病気知らず・老化防止のために必要な体力と、オリンピックなどのスポーツ競技で勝つための体力とは同じではありません。ここでいう体力は健康関連体力とも言います。一口で体力と言ってもさまざまで、粘り強さや力強さがその代表ですが、体の柔らかさや病気のなりにくさなども含む、とても幅広い概念です(図1)。
老化防止のためには、これらの体力を全面的に高めていくことが重要です。では、どのようなポイントに気をつければ効果的な体力づくりができるのでしょうか?

まず高めたい体力は全身持久力 加えて筋力と柔軟性をバランスよく

体力にはさまざまな要素がありますが、これらのなかで病気知らず・老化防止の観点からまず高めておきたい体力の要素として、全身持久力が挙げられます。全身持久力とは長時間運動や活動を継続する力、すなわち粘り強さのことです。この全身持久力が高い人は低い人と比較して、脳卒中や心筋梗塞、がんなどの生活習慣病に罹患したり、これらにより死亡するリスクが低いことが多くの研究から明らかになっています。全身持久力が同年代の同性の平均以上であれば、平均未満の人たちと比較して、生活習慣病の発症リスクが約半分になります。粘り強さを高めていくためには、ウオーキングや水泳などの息が弾んで数十分継続できるような運動、すなわち有酸素運動が適しています。
全身持久力に加えて、筋力を向上させることも介護や寝たきりの予防などに有用であることが最近の研究でわかってきました。筋力の向上には、ウオーキングなどの軽い運動ではなく、重いものを力いっぱい持ち上げるようないわゆる筋力トレーニングが必要です。
全身持久力や筋力を高めるような運動を行うためには、関節や筋肉が滑らかに動かなくてはなりません。そのためには、柔軟性、すなわちからだの柔らかさを高めておく必要があります。柔軟性を高めるには、ストレッチング(柔軟体操)やヨーガなどが適しています。
これらの体力が一つひとつ高まっても効果はありますが、すべてがバランスよく高まることが理想的です。全身持久力、筋力、柔軟性を高めるような運動を組み合わせて行うこと(これをコンバインドトレーニング、あるいはウェルラウンドトレーニングなどと言います)がもっとも効果的な病気知らず・老化防止のための体力づくりと言えるでしょう(図2)。

体力づくりの原則を知って、効果的で安全なトレーニングを行う

有酸素運動でも筋力トレーニングでもいずれにせよ、効果的で安全な体力づくりのためには、守るべき原則がいくつかあります。最初に必要なこととして、ふだんの生活で行っているのと同じような活動ではなく、“ややきつい”と感じるような活動を行うことです。これを「過負荷(オーバーロード)の原則」と言います。
次に、運動は一生懸命取り組めば体力をどんどん向上させますが、サボってしまえばその効果は消えてしまいます。体力づくりは継続することが重要です。これを「可逆性(継続性・反復性)の原則」と言います。
また、有酸素運動を行えば全身持久力が高まりますが、筋力は高まりません。目的とする体力を高めるためには、目的に合った運動を行わないといけないということです。これを「特異性の原則」と言います。
そのほかに、からだの一部ではなく全身の体力を向上させる(全面性)、鍛えている部位をしっかり意識する(意識性)、少しずつ強度や量、頻度を増やしていく(漸進性)、個人の特性に応じた取り組みを行う(個別性)などのポイントが挙げられます(表1)。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画