家族や身近な人がうつ病で苦しんでいることを知ると、どのように接したらいいか戸惑う人が多いでしょう。
「うつ病は励まさない」ということが大事です。精神的なエネルギーが低下し、気持ちのうえでは「こんなことではダメだ」「もっと頑張らなければ」と思いながら、実際には思うように気分が上向かない、体も動かないという状態ですので、周りからの励ましの言葉が、かえって負担になってしまうことが少なくありません。
また、それと同じくらい、「いつもどおりに接する」ことが大切です。ふだんと違う態度をとったり、腫れ物に触るように接したりすると、本人は「自分はそんなに悪い状態なのか」「みんなに迷惑をかけている」などと、うつ気分や不安を強めてしまいがちです。

家事などができずにつらく思っていることがあれば、手伝えることは手伝って、本人が休んだり、ラクな気持ちになれる環境をつくる工夫をすることも大切です。
ただし、周りの人たちだけで相談したり、病気だからと何でもやってあげるようになってしまうと、本人が「自分は何もできないんだ」と落ち込んでしまうこともあります。
それよりもまず、「今のあなたが心配だ」「できることがあれば手伝いたい」というメッセージを率直に伝えてください。そして、どんなことができずに困っているのか、何から手をつけていけばいいのか、できるだけ本人の言葉に耳を傾けるようにしましょう。

「うつ病ではないだろうか」と周りの人が心配して、医療機関に受診させたいときに、本人が納得しないまま無理にすすめたり、行き先を隠して連れて行ったりしても、良い結果にはつながりません。
うつ病の治療は、長い期間がかかることがあります。また、精神科医が一方的に治療を進めることはできません。患者さんに率直に話してもらえなければ、医師にも患者さんの状態はわかりません。患者さんと医師が力を合わせて病気を治していく姿勢が大切なのです。
日々の様子を見たり、本人と話したりするなかで、「最近よく眠れないのではないか」「ずっと食欲が落ちたままだ」などと、気になる症状を具体的に話題にして受診をすすめてみましょう。そして、医師に相談することについて、焦らずに話し合ってください。必要と感じれば、家族や身近な人が一緒に受診して、医師の説明を聞いても良いでしょう。