ヘルスケアコラム
焦らず、無理せず、ゆっくりと今を楽しむ気持ちを忘れずに

環境の変化と生理的な変化が同時に訪れる更年期

更年期は、子どもの自立、退職、近親者の死などさまざまな喪失を体験し、生きがいを失ったり自己の存在価値を認められなくなったりしやすい時期です。また身体面では、性ホルモンのバランスの乱れや、脳を含めた身体機能の低下といった変化が見られるようになります(図1)。それまで病気知らずで健康に自信があった人では、特にこの自然な変化の受け入れがうまくいかないことが多いようです。
いつまでも若々しくあるための努力はもちろん大切ですが、時期や程度の差こそあれ老化はすべての人に確実に訪れます。これに抵抗しすぎると、逆に心身に無理を来したり、老いを自覚したときの落胆も大きくなりやすいものです。

老化をありのままに受け入れ、より快適に過ごす工夫を

老化という自然現象に抗うばかりではなく、受け入れるための準備をしておくことも必要です。老年期は、長い人生経験のなかで身につけたものが統合され、新しい視点を見つける能力や創造力が培われる時期で、芸術の分野で優れた才能を発揮するという報告もあります。
親族や友人との親交を深める、適度な運動の習慣をつける、体力が落ちても楽しめる趣味を見つけるなど、無理せず生活に張りが出るような計画を立て、加齢という変化のなかでより快適に過ごせるように工夫することが大切です。また、必要な援助を求めることを情けない、恥ずかしいと思わないようにしましょう。

更年期のうつに対して女性ホルモン療法が効く場合も

休養、薬物療法といううつ病の治療の基本に加えて、更年期のうつでは女性ホルモンによる治療が効果的なことがあります。また、高齢者では症状が改善するまでに時間がかかることが多いうえに、加齢のためにできなくなっていることもあるので、焦らないことがより重要になってきます。調子が悪いときに将来のことを考えると悲観的になりやすく、悪循環に陥りやすいため、先のことより、今の少しでもいいところに目を向けるようにしましょう。
更年期や老年期は、家庭内にその時期を経験している人がいないことが多く、身近な人につらさを理解してもらえないために症状が長く続いたり、悪化することがあります。どの時期でも言えることですが、周囲がその時期の特徴を知り理解することが大切です。高齢者に対してはその人生に興味を持ち、今までやってきたことに敬意を払いましょう。ある程度回復したら、本人に負担にならない程度の役割をつくり、家族や社会の一員として機能してもらったり、本人の意思を尊重しつつ生きがいを探す手伝いをすることも回復につながります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画