ヘルスケアコラム
5人に1人が悩んでいる不眠。快眠へ誘う生活環境を整えよう

不眠が続くと脳梗塞など身体的な病気の原因にも

人生のすべての時間のなかで、睡眠に費やされる時間は約30%を占めます。睡眠には、脳やこころの疲労回復、成長ホルモンなどの分泌(寝る子は育つというのはこのホルモンと関係があります)、記憶や感情の整理、免疫機能の向上などの役割があります。
しかし、環境の多様化に伴い、私たちの生活スタイルも夜型へと変化し、慢性的な睡眠不足の人が多くなりました。今や日本人の5人に1人は何らかの不眠を抱えながら生活をしていると言われています。
睡眠時無呼吸症候群※も不眠の一つに分類されます。不眠で亡くなる方はほとんどいませんが、日中のだるさや眠気などの症状のため、日常生活への悪影響も少なくありません(図1)。また、不眠が続くと脳梗塞や脳出血、呼吸器疾患などからだの病気の原因にもなります。アメリカの調査では不眠症に対する適切な治療によって、医療費などを年間1.6兆円も抑制できると試算されています。

不眠の原因には5つのPが関わっている

不眠といっても症状はさまざまですが、寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に途中で目覚める(中途覚醒)、眠りが浅くて眠った気がしない(熟睡困難)、朝早く目が覚める(早朝覚醒)の4タイプに分けられます。
また、不眠の原因には5つのPが関わっているとされています。
(1)身体的な問題
Physical:身体的な病気や痛みなど
(2)生理的な問題
Physiological:騒音や環境の変化
(3)心理的な問題
Psychological:精神的ストレス
(4)心の病気
Psychiatric:うつ病など
(5)薬の副作用
Pharmacological:カフェインや薬剤によるもの

毎日、就寝時間を一定にし寝室の温度・湿度を快適に保つ

不眠になってしまったら、まず生活環境を見直す必要があります。昼間に適度な運動をすること、毎日同じ時間に布団に入ること、寝室は静かで真っ暗にすること、温度・湿度を快適に保つこと、睡眠前の満腹・空腹を避けること、コーヒーやタバコを控えることなどが大切なポイントです。こうした環境の整備は不眠の予防にもつながります。
最近は、比較的安全な睡眠導入剤※が開発されていますので、不眠が続くようであれば医療機関を受診しましょう。

※睡眠時無呼吸症候群●睡眠時に気道が閉塞することによって10秒以上にわたって呼吸が止まる病気。太っている人に多く、不眠や日中の眠気の原因となる。
※睡眠導入剤●作用時間によって超短時間作用型、短時間作用型、中時間作用型、長時間作用型などがあり、不眠の型によって使い分けられる。最近の薬は依存性などの副作用が少ない。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画