ヘルスケアコラム
しつけの問題ではなく生まれつき不注意、多動性、衝動性が目立つ

小学校入学後に発見されやすく男子のほうが症例的に多い

注意欠陥多動性障害(ADHD)児は不注意、多動、突発的な行動が年齢にふさわしくなく、学校生活に代表される社会活動がうまくできない子どもたちを指します。これらの徴候(表1)は幼児期から見られますが、小学校入学後に特に目立つようになります。
ADHDは100人に3~5人くらいいると言われていますが、非常に問題になる子どもは100人に1人くらいです。特に医療機関を受診する子どもは男の子のほうが女の子の10倍ほど多いと言われています。
ADHDの原因は脳の機能障害であり、ほとんどが生まれつきであるようです。しつけが悪いと誤解されがちですが、しつけの問題ということはまずありません。

小学校高学年になると親への反発行動が見られる

ADHDの典型的な経過を言えば乳幼児期に発達の問題はなく、幼稚園にはすぐに慣れますが、だんだんほかの子どもを叩いたり、運動会で集団行動がとれないようになります。
小学校に入学すると席に座っていられず、毎日家や学校で注意されるようになります。持っている能力の割に成績も芳しくないため自分に自信が持てず、小学校高学年くらいになると、親にむやみに反発しはじめます。すべてではありませんが、一部は非行的な行動をとったり、不登校となったり、家で暴力を振るったりします(DBD:破壊的行動障害)。

自尊心を持てる育て方が大事薬で劇的に改善することも

こうならないように、家族は本人の特性を理解して、自尊心を持てるような育て方を心がけましょう。どうしても叱ることが多くなりますから、叱る回数を減らす努力をしましょう。周りの子どもや兄弟と比較するのではなく、本人の成長そのものを評価するようにして、ほんのわずかでも良くなっていたらほめてあげてください。指示はなるべく単純で具体的にすることが重要です。また、学校での失敗に関しては教師とよく話し合って対応を考えていくことが必要になります。こうした積み重ねが子どもの自尊心の形成につながります。
以上のような対応でもうまくいかないときは、医療機関を受診したほうがよいでしょう。対応の仕方や環境の調整の仕方をガイダンスしてもらい、必要であれば薬を処方してもらいます。神経の働きを良くする薬が使われますが、薬で悪循環を断ち切ると劇的に良くなることがありますので、薬を恐れないでうまく利用することも大切です。また、医療機関に相談して理解者を得ると、子育てで苦労している親自身も楽になります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画