ヘルスケアコラム
外傷的体験がもたらす不安や恐怖子どもの話をよく聞き共感すること

周りのサポートの大小が発症に関わっている

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)は、生命に危険を感じるような体験をしたあとに生じる不安や恐怖などの精神症状を指します。具体的な外傷的な体験として地震などの自然災害、交通事故、虐待、いじめ、殺傷事件などが挙げられます。
感じ方に関しては、同じ外傷的な体験をしても症状の出現や重さには個人差が生じます。
特に子どもの場合は経験不足から、大人にしてみればたいしたことのないことでも外傷的な体験になることを考慮して、子どもがどのように受けとめているかを考えることが大切です。
PTSDは心が弱いとか卑怯といった誤解がありますが、むしろ几帳面で真面目、悩みを自力で解決しようとするタイプに多いと言われています。また、外傷的な体験をしたときに、家族や周りの人がどれだけサポートできるかということも、発症するかしないかに大きく関わっています。
子どものPTSDに共通する特徴としては、①外傷的な体験を繰り返し思い出す、②外傷的な体験を思い出すような状況を避け、さらに感情が乏しくなる、③イライラやそわそわすることが目立つようになる、④身体症状の訴えがある、⑤なかなか眠れなくなる、といったことが見られます(図1)。

子どもの不安を軽くし、体験を心の外側に引き出すことが大切

対応としてはまず、子どもの話をよく聞き、共感することです。このような接し方をすることによって子どもの不安は軽くなり、さらに心の奥深くにしまわれやすい外傷的な体験を心の外側に出すという2つの効果があります。その際、無理に外傷的な体験を話させるのではなく、自然に話せるようにリラックスできる状況をつくることが大切です。
イライラや身体症状に関してはよく生じることであり、時間が経てば治ることを親子ともに丁寧に説明します。励ましは、親や周りの期待に応えられない自分をかえって意識させることになるので、やめたほうがよいでしょう。

症状が重いときは専門家の治療を受ける

これらの対応で症状が軽減せず、不登校や著しい学業不振、問題行動などがあるときには専門的な治療を要します。医療機関ではカウンセリングや遊戯療法などを時間をかけて行います。緊張感が強い場合には抗不安薬や抗うつ薬が用いられます。
これらの治療は効果的ではありますが、費用対効果の面が非常に悪く、ほとんどボランティアに近い形で行われていることと、長い時間を要することを理解しておきましょう。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画