ヘルスケアコラム
抗老化・抗動脈硬化作用などを持つ野菜・果物と魚が予防に有効

効果は果物より野菜のほうが強く野菜ジュースも効果的

アルツハイマー病(AD)を予防する食品として、野菜・果物と魚があります。
野菜・果物はビタミンC、ビタミンE、βカロテンなどの抗酸化物を多く含み抗老化作用を発揮すると考えられます。効果は果物よりも野菜のほうが強く、野菜ジュースでも有効です。野菜には抗酸化物のほかに、動脈硬化の原因になる高ホモシステイン血症※を防ぐ葉酸やビタミンB群が多いことも予防効果に関係しています。
魚の予防効果は、魚油に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)の作用と考えられます。n-3 PUFAには抗炎症作用、抗不整脈作用、抗血小板凝集能亢進作用、抗動脈硬化作用、血清脂質の改善作用などがあります。
肉にはn-6 PUFAや飽和脂肪酸が多く、極端な摂取はADの危険因子になりますが、肉は良質なたんぱく質やビタミンB群の供給源でもあるので食べる必要があります。

なんでもよく食べる人ほど認知機能は衰えない

高齢者では単調な食事内容の繰り返しから偏食や食欲不振(少食)になり、低栄養に陥る危険性があります。また、食事をつくるのが困難な場合や面倒な場合には、必要なエネルギーのほとんどを甘い菓子類、ケーキなどで間に合わせてしまうこともあります。これは、過剰の危険因子と欠乏の危険因子が共存していることになります(図1)。
食べすぎはよくありませんが、案外見逃されるのは少食のほうです。高齢者の認知機能の維持には極端な制限はかえって危険のようです。われわれが行った調査では、認知機能を維持している群はなんでもよく食べており、総摂取エネルギーも高いという結果が出ました。海外の報告でも、野菜を多く食べる群ほど総摂取エネルギーが高いことがわかっています。

栄養補給は基本的にサプリメントではなく食事で

現在までのところ、単一の抗酸化物のサプリメントによってADが予防されたということはありません。場合によっては副作用のほうが問題になることもあります。この理由として、食物中に含まれる濃度よりはるかに大量の物質を純粋な形で摂取することは、一種の薬物の大量投与と同じであることが指摘されています。
栄養素は食事としてとらなければならず、また最近の考えでは、個別の食品や栄養素よりも食事全体のパターン(たとえば日本食や地中海食など)が重視されています。

※高ホモシステイン血症:ホモシステインは天然アミノ酸で、必須アミノ酸のメチオニンやシステイン生合成の前駆体である。葉酸やビタミンB12欠乏で血中濃度が高くなる。高ホモシステイン血症は動脈硬化性疾患やアルツハイマー病の危険因子。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画