ヘルスケアコラム
ストレッサーによりさまざまに変化。有害なものだけでなく有益なものも

刺激を受けて生じた“ゆがみ”がストレス

本来「ストレス」という言葉は、外から力が加えられたときに生ずる物体の「ゆがみ」を意味すると言われ、もともとは工学や物理学の領域の言葉であったとされています。ストレスという言葉を医学の領域に最初に導入したのは、ウォルター・B・キャノンというアメリカの生理学者で、現在では一般社会において広く使われています。
何らかの刺激が生体に加えられたときに、生体側に生じたゆがみがストレスです。この刺激は「ストレッサー」と呼ばれ、厳密にはストレッサーとストレスは区別されますが、現在はストレッサーも、ストレスとまとめて呼んでいます。

生体が壊れないようにするのがストレスマネジメント

大きなボールに石がぶつかった状況にたとえてみましょう。ボールに石がぶつかると、くぼみが生じます。これがストレスで、ゆがみの原因の石がストレッサーです(図1)。石が大きかったり、当たるスピードが速かったり、あるいは石の数が多いとゆがみも大きくなります。つまり、ストレッサーによってストレスはいろいろと変化をするということです。
このボールがパンクした状態が、ストレス性の病気ということになります。ストレスマネジメントとは、このボールが割れないように工夫することを言います。たとえば、石を小さく削る(仕事の負担を減らす)ことや、ボールの空気を抜く(気分転換する)ことで、ボールが割れるのを防ぐのです。パンクしてしまったボールの修理がストレス疾患の治療に相当します。

受け入れやすいストレスと受け入れにくいストレス

ストレスには、私たちにとって受け入れやすいストレス(快ストレス)と、受け入れにくいストレス(不快ストレス)があります(図2)。
ストレスは有害なものばかりでなく、からだや心に受け入れやすいストレス、あるいは健康にとって有益なストレスも多くあるのです。また、ある人が快いストレスであると感じていても、別の人にとっては不快になるものもあります。たとえば、会社で昇進することは、一般的には地位が上がりやりがいも生じ快いストレスと言えますが、人によっては責任や仕事の量が増えるということで不快なストレスになりうるのです。

また、ストレスが軽減されても、見方を変えれば大きなストレスになります。たとえば、定年後に仕事から完全に離れてストレスがまったくなくなったように見えても、生活リズムが乱れて心身の不調を来しやすくなることもよくあります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画