ヘルスケアコラム
早期診断と、症状に応じた適切な治療薬の選択

認知症は脳の神経細胞が減ったことにより発症

五体満足にもかかわらず、脳の機能の低下により、日常生活あるいは社会生活に困難を来している状態を認知症と言います。
認知症は、脳の神経細胞が減ったために起こる病気ですが、神経細胞が減る原因はさまざまであり、治療は原因により異なります。
認知症の原因としてもっとも多いものは、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)です。この病気は、脳の中にアミロイドβという異常なたんぱくがたまってしまい、それが原因で神経細胞が減ってしまうことがわかっています。そのため世界中で、このアミロイドβの蓄積を抑える治療法が研究されています。

アルツハイマー型認知症の進行を遅らせるアリセプト

アミロイドβの蓄積を抑える薬はまだありませんが、アルツハイマー型認知症で悪くなっているアセチルコリン神経系※の働きを高める作用を持つ薬が発売されています。それが、アリセプト?(塩酸ドネペジル)です。
軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の人はアリセプトを内服することにより、平均して約9カ月程度、病気の進行(中核症状=認知機能障害の進行)を遅らせることができます。副作用として、飲み始めの時期に嘔吐、下痢などの消化器症状が出る場合がありますが、軽度であれば飲み続けるうちに消失します。重度の副作用として肝障害、横紋筋融解症※などが報告されており、内服中は定期的に血液検査を受けることをおすすめします。

妄想や幻覚、徘徊などの周辺症状は薬で和らげられる場合も

認知症の症状のなかで妄想や幻覚、興奮、感情易変(感情が変わりやすい)、暴言・暴力、不安、抑うつ、不眠、せん妄(軽度の意識障害に興奮を伴うもの)などを周辺症状(認知症に伴う行動心理学的症候)と言います(図2)。周辺症状は薬で緩和できる場合があります。病状に合わせ、精神病やてんかんの治療薬やグラマリール?を少量内服します。漢方薬の抑肝散(よくかんさん)も効果があるとの報告があります。脳血管性認知症に伴う意欲低下にはサアミオン?、シンメトレル?などの脳循環・代謝改善薬が効果的です。
ただし、これらの薬は症状に合わせて増減や変更するもので、長期にわたり内服するものではありません。看護や介護の工夫で症状の緩和を図り、薬に頼らないようにしましょう。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画