ヘルスケアコラム
血流量の増大や心拍数の減少、血圧の降下などを自分で調整可能に

心身の状態が緊張や不安から弛緩や鎮静にスイッチ

自律訓練(autogenic training)法は、催眠の研究をしていたドイツの精神医学者シュルツによって体系化されたものです。心身症や神経症などの心理生理学的治療法として発展してきました。自律訓練法はセルフコントロール法としても優れており、マスターできれば自分で簡単にリラックスすることができます。
自律訓練法の特徴は、心理的側面と合わせて生理的変化を重視していることです。練習の効果が出てくると皮膚温の上昇、血流量の増大、心拍数の減少、血圧の降下などからだの変化を自分で調整できるようになります。このような生理的変化が現れるようになると、心身の状態が緊張、不安、恐怖の状態から弛緩、鎮静の状態に自然に切り替えられていきます。

ストレスに強くなる効果も期待できる

現在、自律訓練法は医療機関以外に、企業や教育現場、教養講座などで広く用いられています。その理由は心身症の患者さんだけでなく、健康な人のリフレッシュ、能率の向上、集中力の増大、病気の予防や健康の増進などにも大きな効果があるからです。
ストレス社会の中で、私たちはストレスに耐えられるだけの抵抗力が必要とされています。自律訓練法にはそのニーズを満たした、ストレスのクッション効果とストレス耐性を強める効果が確認されています。

練習時間は3~5分1日3回を目安に

自律訓練法は標準練習と特殊練習からなりますが、ここでは基本の標準練習のコツを簡単に述べます。練習する姿勢は図1に示したように、いすに腰かける方法と仰向けになる姿勢があります。いずれもベルトやネクタイをゆるめて、リラックスした姿勢でなるべく静かな落ち着いた場所で行うのが効果的です。練習回数は1日3回程度、1回の練習時間は3~5分程度です。
自律訓練法の基本は「受動的注意集中」といって練習に集中しますが、あまり一生懸命になりすぎても逆効果です。標準練習は表1に示したように、7段階の言語公式(決まった言葉)から構成されています。最初の背景公式とは練習を行う前に、とりあえず気持ちを落ち着かせる言語公式で、「気持ちが落ち着いている」とゆっくりと頭のなかで唱えます。声に出す必要はありません。その後、第1から第6公式までを順々に実践していきます。練習の終了時には、手を開いたり閉じたりする、腕の屈伸運動、背伸びを順次行う消去動作を必ず行ってください。自立訓練法は自己催眠法の1つですから、消去動作をしっかり行わないと、ふらつきや頭がボーっとするなど日常生活に支障を来すことがあります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画