ヘルスケアコラム
音楽の感情を動かす力を利用して、心身の活性化や癒し効果を得る

心地よい音楽が流れると消化管の働きが良くなる

音楽には、昔から感情の鎮静や誘発、感動などの癒し効果があることが知られています。たとえば、思い出のある曲を聞いて思わず涙をこぼしたり、映画のシーンに音楽が使われ臨場感を盛り上げたりすることは誰しも経験したことがあるでしょう。また、仲間と一緒にカラオケを楽しむなど、コミュニケーションをとる方法としても音楽は有用です。
音楽は生理的な働きとして、感覚細胞を通して大脳皮質の感情中枢に大きな影響を与えます。作曲者の感情は楽譜を通して聞く人に伝わり、喜びや悲しみを分かち合うことができます。また、自律神経系を活発にしたり、抑制することで内臓器官の働きを調整します。たとえば、食事のときに心地よい音楽が流れていると消化管の働きも良くなります。さらに、音楽は長期記憶においていろいろな出来事を結びつける性質があります。高齢者が昔のメロディーを聞くと若いころを思い出したりするのはそのためです。

リハビリや保健・教育活動にも取り入れられている

音楽の心理的、生理的、社会的働きを利用してリハビリテーション、保健活動、教育活動に活用した治療法が音楽療法です(図1)。
一般的に音楽療法は、音楽という非言語的コミュニケーションを用いて人間の疎通性、社会性の増進、精神・身体機能の回復を目的としていると考えてよいでしょう。音楽療法には音楽を聴く受動的音楽療法と、楽器の演奏や歌うことをするなどの能動的音楽療法に大別されます。

発達障害や心身症から認知症まで多くの疾患治療に効果

音楽療法は、多くの疾患に対して幅広い年齢層に治療効果があることが確認されています。適応は精神遅滞や学習障害、自閉症などの発達障害、心理的葛藤やストレスによる心身症、身体機能障害、生活習慣病、統合失調症や躁うつ病などの精神疾患、不登校やひきこもりなどの適応障害、老化現象や認知症など多岐にわたっています。
音楽療法は音楽療法を専門とする治療者(音楽療法士)の指導の下で、受療者に合ったプログラムに基づき治療目標を設定して行われます。なお、日本音楽療法学会が認定する音楽療法士は日本ではまだ少ないのが現状ですが、学会では将来的に国家認定化を目指して運動中です。音楽療法士が活躍する場は、今後ますます増えていくことでしょう。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画