ヘルスケアコラム

噛む機能の維持には、80歳で自分の歯を20本以上残そう
「8020運動」は、健康寿命の延びをめざすスローガン
「8020(はちまるにいまる)運動」とは、80歳になっても20本以上の自分の歯を維持することを目標に、国と日本歯科医師会が1990年頃から進めている歯科保健活動です。男女合わせての平均寿命が80歳を超える、世界の長寿国のなかでもトップランナーの日本ですが、本来喜ぶべき寿命の延びが、社会のさまざまな危機や不幸と結びつけられていくという矛盾した状況もあります。
8020運動の名称はこういった状況に対し、数値的な寿命の延びから、人間として真に豊かな寿命(健康寿命)の延びへの転換をめざす、高齢社会でのポジティブな歯科保健スローガンとして評価されています。
8020運動の名称はこういった状況に対し、数値的な寿命の延びから、人間として真に豊かな寿命(健康寿命)の延びへの転換をめざす、高齢社会でのポジティブな歯科保健スローガンとして評価されています。
噛むことを中心とする口の機能は全身の健康に深く関わっている
この運動におけるこれからの大きな課題は、「8020」という4文字のなかの「20」の持つメッセージを、より多くの人により深く理解してもらうことです。これは、そのまま「噛(か)む」こと、すなわち「咀嚼嚥下(そしゃくえんげ)を含む口腔の多様な機能」への理解に置き換えられます。長寿社会の真の目的が年齢の数値的な延びではないことと同様に、「8020」の「20」も単に20本の歯の数を意味するものではありません。
近年、要介護者の臨床活動、成・壮年期の生活上のストレス、子どもの食のあり方などを通したさまざまな現象のなかで、噛むということを中心とする口の機能と、全身の健康との具体的な関係(図1)に加えて、人間が人間らしく生きるための生活の質や活力との深い関わりが注目されています。要介護者や高齢者がバランスよく噛み合わせて通常の食事をとれる基準となる20本の歯の数は、くしくも成長の出発点で子どもの口の中に生えてくる乳歯の数と合致します。
近年、要介護者の臨床活動、成・壮年期の生活上のストレス、子どもの食のあり方などを通したさまざまな現象のなかで、噛むということを中心とする口の機能と、全身の健康との具体的な関係(図1)に加えて、人間が人間らしく生きるための生活の質や活力との深い関わりが注目されています。要介護者や高齢者がバランスよく噛み合わせて通常の食事をとれる基準となる20本の歯の数は、くしくも成長の出発点で子どもの口の中に生えてくる乳歯の数と合致します。
人の寿命と歯の寿命との差を縮めて、健康的に老いる
一生を誕生から死への直線としてではなく、円環(ライフサイクル)としてとらえるとき(図2)、20本という歯数はアンチエイジングの考え方になんらかの新しい意味を与えるものかもしれません。
昔は、人の寿命と歯の寿命にさほど差はなかったため、歯を失うことは老いの象徴でした。現代の高齢社会は、人の寿命と歯の寿命に大きな差をつくってしまいました。8020運動とはその差を縮める作業であり、結果として平均寿命に健康寿命を近づけようという運動でもあります。「理想の老いには、まず老いが肯定され受け入れられねばならない」という考え方と整合性を持つアンチエイジングの実践活動として、8020運動の推進が望まれます。
昔は、人の寿命と歯の寿命にさほど差はなかったため、歯を失うことは老いの象徴でした。現代の高齢社会は、人の寿命と歯の寿命に大きな差をつくってしまいました。8020運動とはその差を縮める作業であり、結果として平均寿命に健康寿命を近づけようという運動でもあります。「理想の老いには、まず老いが肯定され受け入れられねばならない」という考え方と整合性を持つアンチエイジングの実践活動として、8020運動の推進が望まれます。

【引用・参考文献】
総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画
総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画