ヘルスケアコラム
がんの存在を示す目印となる物質特に前立腺がんの早期発見に有効

代表的な腫瘍マーカーは数十種類がんの存在や量、特性を推定

腫瘍(しゅよう)マーカーはがん(腫瘍)細胞が体内にあることを示す目印(マーカー)となる物質です。血液や尿にこの物質が含まれているかを調べることで、がんの存在や量、特性を推定できます。がん細胞がつくり出す物質や、正常な細胞ががん細胞に反応してつくり出す物質が用いられ、代表的なものだけでも数十種類が知られています(図1)。

がんの種類別に複数のマーカーを組み合わせて繰り返し測定

どの腫瘍マーカーを測定するかは、どのがんを標的にするかで異なります。ただし、腫瘍マーカーの数値が特定のがんの場合だけ上昇するということはまれで、大部分は複数の種類のがんに対応しています。また、1種類のがんに対応する腫瘍マーカーが1種類だけしかないということもありません。がんの種類により、複数の腫瘍マーカーを組み合わせ、適当な間隔で繰り返し測定することが一般的です。

がんかどうかは画像検査や組織検査の結果を総合して判断

腫瘍マーカーの測定はがんに関する検査の一つとして広く行われていますが、いくつか注意すべき問題があります。
第1に、腫瘍マーカーの数値が高くても、必ずしもがんが存在するとは限りません。良性の疾患でも上昇します。
第2に、腫瘍マーカーの数値が低くても、必ずしもがんが存在しないとは限りません。初期の段階では上昇しません。また、腫瘍マーカーをつくらないがんもあります。
第3に、腫瘍マーカーの数値ががんの大きさを反映するとは限りません。たとえば、腫瘍マーカーが10の場合と20の場合を比べたとき、がんが2倍大きいわけでも、10の分だけ進行しているわけでもありません。
がんであるという確定診断は腫瘍マーカーの測定のほか、画像検査や組織検査を行い、それらを総合して判断する必要があります。
腫瘍マーカーは現時点において、がんの早期発見に役立つというよりも、がん治療の効果判定や経過観察のために使われています。そのため、がん検診として推奨されているものはありません。唯一の例外は前立腺がんに対するPSA(前立腺特異抗原)測定であり、高齢の男性で実施されています(前立腺検査の項参照)。
PSAとは、前立腺に特異的なたんぱく質の一種です。正常の場合でもPSAは血液中に存在しますが、前立腺がんになると大量のPSAが血液中に流れ出します。この性質を利用して、PSAは前立腺がんを発見するための指標として用いられ、前立腺がんはこのPSA検査によって高い精度で発見することが可能です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画