ヘルスケアコラム
心臓や肺、気管・気管支、胸膜などの異常を見つける

簡単に撮影でき、被ばく量もCT検査の100分の1以下

胸部X線写真は簡単に撮影でき、また撮影時の被ばく量も胸部CT検査の100分の1以下と低いため、病気の診断や健康診断などに広く使われています。この検査で心臓の大きさや形、肺や気管・気管支、胸膜などの異常を見つけることができますが、もちろん万能ではありません。たとえば、肺がんという重大な病気でも病変の大きさや位置、性状によっては胸部X線写真で見つけることができません。不整脈や狭心症などの心臓疾患も、この検査では診断することができません。
胸部X線検査が正常でも、病状によっては胸部CT検査や心電図、心臓超音波検査などの検査を追加することが必要になります。

撮影時は検査着に着替えるか、金属類のついていない下着で

人体の各部を透過したX線を直接フィルムに焼きつけたり、デジタル信号として記録したあと、画像化して診断に使用します。
撮影時には上半身裸になるか、金属類のついていない下着あるいは検査着に着替えます。ふつうは胸をフィルム面に密着させるように立ち、胸いっぱいに息を吸ってそのまま息を止めて撮影しますが、必要によりからだの向きや呼吸方法を変えて撮影することもありますので、検査担当者の指示に従ってください。

骨や心臓は白く、空気は黒く映る

胸部X線写真の向かって右側が体の左側になります(図1)。胸部X線検査では空気が少ない部分は白く、空気が多い部分は黒く映ります。脊椎(せきつい)や鎖骨(さこつ)、肋骨(ろっこつ)、肩甲骨(けんこうこつ)などの骨は白く写り、心臓は真ん中やや左寄りに白い影として見え、心臓から出る大動脈も見ることができます。空気を肺に導く気管は、写真の中心上方に脊椎と重なって黒い棒状に認められます。
肺は、酸素を取り込み二酸化炭素を排出する機能を有し、肺の大部分を占める肺胞と、肺胞に血液や空気を供給する血管と気管支から構成されています。肺胞は空気を薄い皮で包んだような構造で、ほとんど空気から成ると言っても過言ではありません。空気を含まない血管(肺動・静脈)は心臓から白く樹枝状に出ているように見え、壁の厚い気管支は白い二重線状に見えますが、細い気管支や肺胞は空気が多く黒く見えます。この部分に浸出物がたまったり腫瘍が発生して空気が減ると、Ⅹ線写真で白く写ってきます。
たとえば、肺炎(図1写真下)は境界がぼんやりとした淡い白い影としてとらえられることが多く、一方肺がん(図1写真中)は境界が明瞭な塊状の白い影として発見されることが多いです。 これらの基本的なことは、担当医から胸部X線写真の説明を受けるときの参考にしてください。
なお、胸部X線写真で異常が疑われる所見を得た場合は、過去の写真が入手可能であれば、それを今回の写真と比較し病変部の経時的な変化を確認します。胸部CT検査などの精査の必要性を検討するうえで大変参考になります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画