ヘルスケアコラム
自覚症状のほとんどない腎臓病腎機能検査によるチェックで早期発見を

血漿中の不要物を排泄し体内環境を維持する腎臓

腎臓は、全身の細胞が健康に生きて役割を果たすための環境を維持しています。細胞が仕事をするには酸素や栄養、電解質、水を与えたり、細胞が放出する不要物質の炭酸ガスや毒素、余った電解質などを受け入れたりする環境が必要です。細胞の周りにあるこの環境を組織間液(図1)と言い、これを常に新しく保っているのが、全身を流れる血液です。血液の液体成分である血漿(けっしょう)が毛細血管の壁から漏れ出して新しい組織間液をつくります。一方、細胞から放出された不要物質は毛細血管の壁から血漿に取り込まれ、炭酸ガスは肺から排出され、他の物質は腎臓の糸球体でろ過されて尿の成分になります。こうして血漿中の不要物質が取り除かれ、細胞の環境が維持されるのです。酸とアルカリを調節して血液を中性にするのも腎臓の仕事です。
わたしたちのからだは体重の40%が固形質で、残りの60%が水分です。60%のうち40%が細胞自身が生きるための細胞内液で、残り20%が細胞外液です(そのうち15%が組織間液で、5%が血漿)。この水分(図2)も、腎臓が一手に引き受けて調節しています。

糸球体のろ過能力を見るクレアチニンクリアランス

腎機能検査は、こういった腎臓の能力を調べたり、治療方針を決めたり、病気の進行や回復の状態を確認したりするために頻繁に行われます。腎機能検査にはいろいろなものがありますが、一般的な診療では、糸球体で血漿をろ過する能力を見る糸球体ろ過値の検査を指します。その検査法として、通常はクレアチニンのクリアランス(腎臓がからだの老廃物を排泄(はいせつ)する能力)が測定されます。クレアチニンは、生涯を通じて毎日決まった量が体内で産生され、そのすべてが糸球体でろ過されて排泄されるため、この検査が糸球体ろ過値を見るのに最適なのです。この糸球体ろ過の検査をクレアチニンクリアランスと言います。
このクリアランスを調べるためには24時間の蓄尿をする必要があります。クレアチニンクリアランスの基準値は男性と女性で異なり、男性は100~120ml/分、女性は80~100ml/分です。

血液検査でも推定可能ただし、かなり悪化してから異常値に

血液検査だけでも腎機能を大まかに推定できる場合があります。健康診断でも測定される血清クレアチニン値は、腎機能が低下するにつれて上昇します。しかし、血清クレアチニン値は腎機能が正常の50%以下になるまでは異常値を示しません(図3)。ですから、血清クレアチニン値が異常値を示したときは、腎機能がかなり悪化していることになりますので、注意が必要です。血清クレアチニン値が基準値内にあっても、経過とともに徐々に上昇していたり、高めになっていたりする場合は、かかりつけの医師か腎臓専門医に相談する必要があります。
クレアチニンとあわせて血清尿素窒素値がよく測定されますが、これはたんぱく質の燃えかすである毒素の指標です。しかし、食べたたんぱく質の量が多かったり、摂取カロリーが不足していたり、重い病気にかかっていたりすると、血清尿素窒素は高くなりますので、腎機能を必ずしも正確には表しません。
もう一つ大切なことは、腎機能が正常の50%以下にまで低下しても自覚症状がほとんど見られない点です。腎臓病の有無や程度は症状で判断してはいけません。まず腎機能を調べることが大切です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画