ヘルスケアコラム
年々増加する前立腺がん比較的安全な方法で診断が可能

罹患率は6番目に高く2020年には2番目に

欧米人に比べて日本人の前立腺がん罹患(りかん)率は低いと言われてきました。しかしながら、最近ではわが国の男性の年齢調査罹患率(基準人口は1985年のモデル人口)は、前立腺がんでは19.9と、胃がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がんに次いで6番目に高く、男性のがん全体部位の5.3%を占めるようになりました。
高齢化や食生活の欧米化などが要因と言われていますが、画像診断の進歩や腫瘍マーカーとしてのPSA(前立腺特異抗原)測定の導入により発見率が向上し、増加傾向にあります。
将来の前立腺がん罹患数の増加に関しては、2020年には肺がんに次いで男性のがんの2番目になると予測されています。

がんの進行とともに前立腺肥大症と同じ症状が出現

前立腺がんの初期にはほとんどの人が無症状です。がんの進行とともに「尿の出が悪い」「排尿回数が多い」「尿の出るまでに時間がかかる」など、健康な男性でも50歳を過ぎたころから加齢現象として認める前立腺肥大と同じ症状が現れますが、がんでは肥大症ほど症状を強く感じません。骨に転移しやすく、腰痛や下肢のしびれで整形外科を受診して初めて前立腺がんが発見されることもあります。
前立腺がんの特徴は非常に進行が遅いことで、発がんしてから臨床的に問題になるまでに10年以上かかると言われています。また、ほかの病気で亡くなった患者の30~40%近くに前立腺がんが見つかります。
治療の面では、ほかのがんに比べて薬が効きやすく、一般的には内分泌療法(ホルモン療法)を行います。これは抗がん剤による治療で見られるような重い副作用がなく、比較的安全性が高い治療法です。

直腸に超音波装置を入れ細い針で前立腺内の検体採取

前立腺生検は、がんの診断を行うために重要な検査法です。具体的には直腸(肛門)に超音波装置を挿入して、細い針を前立腺内に刺し、組織診断に必要な検体を採取します。
比較的安全な検査法ですが、合併症としては出血、急性前立腺炎が数%の頻度で起こる可能性があります。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画