ヘルスケアコラム
長谷川式認知症スケールで認知症を診断する

短時間で実施できる簡単な方法として普及

認知症の診断は、第一に認知症か否かの診断に始まり、次に原因疾患の診断へと進められます。
認知症か否かの診断は、患者の状態と介護者からの情報などを基に総合的に行われますが、臨床の現場で診断の効率化と客観化を図るために、一定の設問項目から構成される評価スケールが用いられています。認知症の評価スケールには2つの条件が求められます。第一は簡易な方法で、かつ短時間で施行できること、第二は正常な認知機能を持つ人は回答できるが、認知症の人は回答が困難な設問であることです。

20点以下は認知症の疑い10点以下は高度な認知症

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、これら2つの条件を満たしており、またその効力などの検討も加えられているので、わが国では広く用いられています。このスケールは1974年に公表され、その後1991年に改訂されたもので、表1に示すように9つの設問より構成されています。正答に対しては1~2点、誤答やできなかったときには0点とし、得点を加算して評価点とします。満点は30点、20点以下の場合は認知症の疑いが持たれます。
実施に当たっては、患者に十分な説明をして了解をとることが大切になります。たとえば、「簡単な物忘れテストのようなものです。診断や治療のうえで参考にさせていただきたいのでお願いします」とお伝えします。
このスケールを認知症群95人、認知症のない群62人に実施しました。得点の分布を検討した結果、カットオフポイント(基準点)を20対21に設定した場合に、弁別力(識別力)がもっとも高い、また、認知症の重症度別の平均得点を検討したところ、認知症のない人の平均得点は24.3点、軽度認知症は19.1点、中等度は15.4点、高度は10.7点、非常に高度は4点でした。得点が10点以下の場合には、まず高度の認知症と考えてよいと思います(図2)。

心身不調時や高学歴の認知症など得点にブレが生じることも

しかし、このスケールはあくまでも簡易な認知症スクリーニング検査であって、これのみで認知症の診断をすることはできません。たとえば、かぜやうつ状態などの心身不調や検査に協力的か否かによって、認知機能が正常であっても得点が低くなったりします。逆に原因疾患の初期や高い知的作業に従事している場合、また高学歴の方では、認知症であっても高得点を示すことがあるので注意する必要があります。
長寿社会では高齢期の認知症はありふれた病気の一つです。専門医から広く一般医の領域へと移りつつあるなかで、このスケールの活用が期待されます。

自分でできる「簡単! 隠れ脳梗塞発見テスト」

MRIで検査すると50代の3人に1人以上の割合で微小な脳梗塞、いわゆる隠れ脳梗塞が見つかります。脳の動脈が詰まる脳梗塞は、半身麻痺や言語障害、時に死に至ります。また、認知症の大きな原因にもなっています。隠れ脳梗塞の状態ではまだ自覚症状もほとんどなく重大な障害を受けることはありませんが、放置しておくと本格的な脳梗塞になる危険性があります。
ここでは、そんな隠れ脳梗塞を自分で発見するためのテストをいくつか紹介します。実際にやってみてできなかったからといって、すぐ心配することはありません。何度か繰り返すうちにうまくできるようになる場合がほとんどです。しかし、何度やってもうまくできない場合は要注意です。脳のどこかに梗塞が起きている可能性があります。早めに専門医の診察を受けるべきです。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画