ヘルスケアコラム
「食間」は食事中にあらず!くすりによって異なる服用回数

「食間」「食前」「食後」などと細かく決まっている服用時間

「食前」は食事前30分くらいを指します。胃の中に食物があると吸収が抑制されてしまうくすりや食欲増進剤、漢方薬などは食前に飲みます。糖尿病の治療薬などには「食直前」の指示が出されるものもあります。この場合、食事をはじめる前5~10分以内に服用します。
「食間」は食事と食事の間ということで空腹時を指し、食事中という意味ではありません。胃の中に食べ物があると非常に吸収が悪くなってしまうくすりなどは食間に服用します。「食後」は食事後30分くらいを指します。くすりは一般的には胃の中に少し食べたものが残っているときのほうが吸収がいいことや、飲み忘れをなくす目的で、本来は別の時間に服用したほうがよくても、大きな問題がない場合はこの指示が出されることがあります。さらに「食直後」は食事の後すぐの意味です。油に溶けやすいくすり(ビタミンAなど)には食物中の油分があったほうが吸収のよいものがあり、このようなくすりの場合にこの指示が出されることもあります。

素人判断で服用を中止すると症状が悪化したり治療が困難に

くすりの効果を最大限に引き出して副作用を最小限にするために大切なことの一つとして、くすりの飲み方を守ることが挙げられます。
たとえば、感染症を治療する目的で処方される抗生物質などは、くすりの体内濃度を厳密に維持するために、8時間おきとか6時間おきに服用するように指示されることもあります。抗生物質は細菌を殺したり、その増殖を抑えたりするくすりですが、飲み忘れなどにより治療中にくすりが十分働く体内濃度(有効濃度)を下回る期間が存在すると、その間に細菌が再び増殖しはじめ症状を悪化させたり、その抗生物質に耐性(抗生物質が効かなくなること)を持った菌(薬剤耐性菌)が出現し治療が困難になることも生じます。したがって、自覚症状がなくなったからといって自分の判断で中止したりせず、処方された分を指示どおりに飲み続けることが重要です。

1日3回の服用が一般的 1日1回か2回のものも増加

くすりを飲む時間は、くすりによって1日1~4回といろいろあります。上記の例のように、細菌を殺すために1日4回飲んでからだの中の濃度を維持する必要のあるくすりの場合、6時間ごとに、または食事のときの3回と就寝前に飲みます。現在もっとも一般的なのは1日3回のものですが、最近ではゆっくり溶けて長く効くくすり(徐放剤)のように1日1回か2回の服用でいいものが増えてきました。また、症状が出たときにだけ飲むくすり(頓服)は、1日に飲んでいい回数や、次の服用までの時間間隔が指示されることがありますので注意しましょう。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画