ヘルスケアコラム
胎児・乳児への影響を考慮し服薬は医師や薬剤師に相談してから

体内にさまざまな変化が起きるとき 栄養素の摂取に注意

妊婦・授乳婦では体内のさまざまな生理機能や環境に変化が見られるため、くすりの効き方や副作用の現れ方が通常と異なることがあります。また妊婦・授乳婦では栄養素の必要量が変化することがあるため、くすりによって影響を受ける栄養素の摂取に注意することが必要です。
さらに、薬物によっては胎盤を通過して胎児に移行すると胎児死亡、催奇形性(奇形を引き起こす可能性、妊娠初期)、胎児発育抑制(妊娠中期)あるいは胎児への副作用(妊娠後期)を生じさせたりするものがありますので、妊娠期に飲むくすりには細心の注意を払うことが大切です。
また、くすりが母乳の中に入ることもあるため、授乳によって間接的にくすりを飲んだ乳児の発育や健康面に影響を及ぼすことも見られます。したがって、場合によっては、一時的に授乳を中止しなければならないこともあります。

妊娠7、8週くらいの胎児がもっともくすりの影響を受けやすい

受精後1~2週間くらいの間では、たとえ危険なくすりの影響を受けたとしても、流産するか完全に回復して奇形等の障害は起こらないと言われています。妊娠7、8週くらいまでの器官形成期(中枢神経、心臓、消化器、手足などの臓器が形成される時期)はもっとも胎児の感受性が高い時期で、この時期ではくすりによって奇形が生じることがあります。その後8~15週くらいまでの間も注意することが必要で、16週以降でも、胎児の成長に影響を及ぼすくすりもありますので注意してください。
また、妊娠の全期間を通じてワクチン、特に生ワクチン(風疹ワクチン、ポリオワクチンなど)は胎児に感染する恐れがあり、時期によっては奇形を生じる恐れがありますので使用しません。妊娠中は不用意にくすりを使用することは控えねばなりませんが、リスクを恐れるあまり本当に必要なくすりの使用も躊躇(ちゅうちょ)してしまうようなことがあれば、母体にとっても胎児にとっても不利益になりかねません。医師や薬剤師によく相談することが必要です。

葉酸の欠乏は母子ともに危険 くすりによっては吸収量が減少

妊娠時における葉酸の欠乏は、母体には巨赤芽球性貧血(骨髄に巨大な赤芽球が出現する貧血の総称)を、胎児には神経管欠損や未熟児、流産などの深刻な影響を及ぼす可能性があります。H2ブロッカー(シメチジンやラニチジン)、イオン交換樹脂製剤(コレスチミドやコレスチラミン)、フェニトイン(抗てんかん薬)などで食物中からの葉酸の吸収量が減少することが知られています。また、アスピリンやインドメタシンのような抗炎症薬や一部の抗生物質により血中濃度が低下しますので、注意が必要です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画