ヘルスケアコラム
くすりの作用に影響を与えるタバコとカフェインとアルコール

ぜん息治療薬の分解を促進して作用を弱めるタバコ

タバコは百害あって一利なしと言われ、健康への影響が問題視されていますが、くすりの作用にも影響を与えてしまうことがあります。
喫煙者では、ぜん息の治療薬であるテオフィリン(テオドールなど)の分解が促進されて作用が弱まることが知られています。これはタバコ煙に含まれる成分が肝臓にあるくすりを分解する酵素(薬物代謝酵素)のうち、CYP1A2と呼ばれるタイプのものを増やしてしまうのが原因です。そのため、喫煙者ではテオフィリンの増量を必要とすることもあります。また、テオフィリンを服用中に禁煙した場合、数日間かけて酵素の量が減って元の量に戻ります。酵素の量が減るとテオフィリンの代謝が減ることになり、分解が遅れて体内濃度が上昇してしまい、頭痛、吐き気や、不整脈など副作用が発現することがありますので、服用中に禁煙するときには医師または薬剤師に必ず相談しましょう。

カフェインを含む食品と併用すると鎮静・催眠薬の作用が弱くなる

コーヒーや紅茶、緑茶はカフェインが多く含まれています。カフェインには眠気を取る作用(中枢神経興奮作用)、心臓の働きを強める作用(強心作用)、尿を増やす作用(利尿作用)などがあります。鎮静・催眠薬はカフェインと正反対の中枢神経抑制作用を持つくすりですので、併用すると作用が減弱します。また、テオフィリンはカフェインを多く含む食品と併用すると、副作用が強く出ることがあります。

くすりの作用を強めたり弱めたり…服薬中の大量の飲酒はNG

アルコールはもっともくすりと相互作用を起こしやすい食品と言えます。アルコールはくすりと同様に肝臓で代謝されます。アルコールが体内にある状態では多くのくすりの肝臓での分解が遅れて副作用が現れることがあります。また、毎日飲酒する人は、肝臓の薬物代謝酵素が増えてきます。そうすると多くのくすりの分解を促進して、作用が弱まることになります。くすりの服用中は大量の飲酒は避けましょう。
くすりの中にはアルコールの分解を減少させて急性アルコール中毒を誘発する可能性のあるものや、二日酔いをしやすくするものもあります。たとえば、ジスルフィラム(アンタビュース)はアルコール依存症の治療薬で、酒嫌いにするものです。このくすりはアルコールと併用すると、アルコールの代謝が抑制されて強い二日酔い症状を呈します。ほかの種類のくすりでも、副作用でアルコールの分解を抑制して二日酔いを起こしやすくするものもあります。また、アルコールは血糖の調節に悪影響を及ぼし、血糖値を上げたり下げたりします。糖尿病治療薬の服用中には注意が必要です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画