ヘルスケアコラム
中国伝来の医学が日本で花開く 生薬を一定の処方で組み合わせる

薬草、浴用剤、香料など 多彩な用途のハーブ

ハーブ(herb)は、一年生の草(草本(そうほん)植物)で薬草および香草を意味していますが、一般にはくすりになる植物、芳香のある植物を指し、多年草はもちろん茎が木になる植物(木本(もくほん)植物)も含めてハーブと呼ばれています。有名なラベンダーは、その花を茶剤(煎(せん)じて服用する、数種類の生薬を調合した薬剤)として睡眠障害や神経性の胃腸症状に使われたり芳香料として用いられます。また、芳香のあるシナモン・スティックは菓子やアルコール飲料に入れたり、漢方薬に配合されてくすりとして使われています。
ハーブの一般的な利用方法は、(1)薬草としての疾病の予防・治療、(2)浴用剤、(3)香料、(4)香辛料、(5)染料(衣類の染色、ヘア・ダイ[毛染め剤])など、(6)伝統儀式・宗教儀式での使用などが挙げられます。
ハーブを疾病の予防・治療に用いる場合は、自己責任によることになります。また、ハーブは自然界にあるものですので、類似品や偽物を見分ける知識も必要になります。

動植物などから加工される生薬 長期保存には注意が必要

植物の中のくすりとして使用する部分のみを乾燥させて簡単な加工を加えたものを生薬(しょうやく)※1と言います。たとえばシナモンはCinnamomum zeylanicumという植物の樹皮ですが、桂皮(けいひ)とも呼ばれ、生薬の一つです。生の状態と異なり保存にも適した加工が加えられていますが、虫や温度、湿度の影響を受けやすく、保存には注意が必要です。生薬は植物に限らず、動物や鉱物から加工されるものもあり、熊の胆のう(熊胆(ゆうたん))や石灰なども生薬になります。
生薬は桂皮のように漢方薬に配合されて使用されるもの、十薬(じゅうやく)(ドクダミの地上部を乾燥させたもの)やゲンノショウコのように主に民間療法で使用されるもの、欧米だけでなく日本でも一般用医薬品の原料とするものなどもあります。

漢方の治療では薬物療法のほかに鍼灸、指圧、体操などを使用

生薬を一定の処方に従って組み合わせたくすりが漢方薬です。漢方は中国で発達した医学が日本に伝えられ、日本で独自の発展を遂げたもので、江戸時代にオランダから伝わった医学を蘭方というのに対して用いた名称です。
漢方の治療では、煎じ薬を用いる薬物療法、鍼灸(しんきゅう)、指圧、マッサージ、体操などの運動・理学療法、また食事療法などが用いられます。なお、診断では「四診」(よんしん)※2という方法が使われています。漢方や中国(中医学)、インド(アーユルヴェーダ医学)、ベトナム(越南医学)の伝承医学は欧米で発達した医学(西洋医学)に対して、東洋医学とも呼ばれます。

※1 生薬と修治(しゅうじ)●生薬は採集した原料をなんらかの方法で加工したものである。品質を保持するために、多くは乾燥操作が加えられる。さらに弱火で加熱したり、蒸したり、煮たり、塩水で加熱したりして、生薬の作用に変化を起こさせることがある。この操作を修治と言い、毒性を除き安全性を高めたり、薬効を強めたりする。
※2 四診●漢方薬は、診断により「証(しょう)」(患者さんの全体像を把握して診断する方法)を決めます。その際、四診と言われる方法が用いられます。(1)患者の訴えを聞く「問診」、(2)患者の顔色や体型などを観察する「望診」、(3)声の張りや体臭などから病状を判定する「聞診」、(4)脈や腹部の緊張度などを患者の体に触れて診察する「切診」です。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画