ヘルスケアコラム
葉酸 細胞分裂や繁殖に重要な役割 妊娠中は特に必要な栄養素

ビタミンB群の仲間で核酸の合成に関わる

1941年に貧血を治す因子がほうれん草から発見され、葉酸と名づけられました。葉酸はビタミンB群のメンバーで、最近、研究の進展により特に重要性が認識されるようになりました。葉酸は正式にはプテロイルモノグルタミン酸のことですが、構造が少し変化した同属体が多く存在し、これらも同様な作用を示します。
葉酸は、細胞分裂や繁殖に重要な役割を持つ核酸(DNA、RNA)の成分となるプリン、ピリミジンの合成を促進(触媒)し、細胞分裂や繁殖に重要な役割を持っています。葉酸が欠乏すると、成熟中の細胞がまず障害を受けます。血液をつくる造血臓器が侵され、貧血になります。

欠乏すると、胎児に大きな影響を与える

妊婦が葉酸欠乏になると、胎児に神経管閉鎖不全が起こります。神経管とは後に脳や神経になる胎児の組織で、通常は妊娠28日までに閉鎖しますが、異常により管が閉鎖しないと無脳症や二分脊髄などの奇形が発生します。この場合、胎児は死亡したり、ハンディキャップを持って生まれたりします。アメリカでは出産1,000件に1件程度の割合で神経管不全症が発生しています。予防するため妊娠適齢期の女性は、十分な量の葉酸を毎日とることが必要です。
葉酸はアミノ酸代謝にも関係し、葉酸欠乏でアミノ酸代謝過程での中間代謝物質(一時的につくられる代謝物)が体内に蓄積します。ホモシステインというアミノ酸は天然のアミノ酸ですが、体たんぱく質には含まれていません。図1に示すように、必須アミノ酸のメチオニンから体たんぱく質に含まれているシステインをつくり出す過程の中間代謝物です。最近、血中ホモシステイン濃度が上昇すると動脈硬化、心筋梗塞など血管が閉塞するタイプの循環器疾患が増加することが明らかになりました。なぜホモシステインが循環器疾患を引き起こす原因になるのかはまだ明らかではありませんが、次のような仮説があります。(1)LDLーコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させる、(2)血管平滑筋細胞を増殖させる、(3)血管コラーゲン繊維を過剰合成する、(4)酸素ラジカルを過剰産生する。
上昇した血液中ホモシステインを減少させる因子として葉酸が挙げられます。葉酸はホモシステインを分解する酵素を促進する役割があるのです。

焼きのりや緑黄色野菜、レバーなどに多く含まれる

血清葉酸濃度を高く、ホモシステイン濃度を低く保って動脈硬化症の発症を抑える葉酸の摂取量として、推定平均必要量は12歳以上の男女で200μg/日とされました。葉酸を多く含む食品は焼きのりやレバー、緑黄色野菜、果実などです(表1)。図2に、食品群別の葉酸摂取比率を示します。野菜類からの摂取が多いようです。嗜好飲料では茶類が主な摂取源となっています。
表1に、食品別の葉酸の含有量を示します。
【引用・参考文献】
 総監修:渡邊 昌、和田 攻 100歳まで元気人生!「病気予防」百科 日本医療企画