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医学書

アジソン病

[受診のコツ]

発症頻度:★(まれにみる)
初診に適した科:内科(系)/内分泌代謝内科/救急部・救命センター(副腎クリーゼ)
初期診断・急性期治療に適する医療機関:総合病院・大学病院/特殊専門病院・研究機関病院(大学病院)
安定期・慢性期治療に適する医療機関:外来診療所
入院の必要性:原則的に必要
薬物治療の目安:継続的に服用することが多い
手術の可能性:なし
治療期間の目安・予後:継続的治療(生活習慣改善〈食事療法・運動療法など〉を含めた総合的治療)が必要
診断・経過観察に必要な検査:血液・尿/CT検査/MRI・MRA/RI検査
その他必要な検査:その他()
※受診のコツは、典型的なケースを想定して総監修者・寺下謙三が判断したものです。実際のケースでは異なることがありますので、判断の目安としてお役立てください。なお、項目はあらかじめ全疾患を通して用意された選択肢から判断したものです。

[概説]

 アジソン病とは、副腎に病変があり慢性的に経過する副腎皮質機能低下症をいい、副腎ホルモンの分泌が低下した状態です。
 副腎皮質機能低下症は、副腎皮質自体に原因疾患が存在する場合の原発性と、それ以外に原因のある続発性があります。
 続発性には、下垂体疾患(下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉分泌不全)、視床下部疾患(視床下部障害による副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン〈CRF〉分泌不全)、ステロイド投与中止後に生じる医原性によるものなどがあります。
 この中の慢性原発性副腎機能低下症がアジソン病であり、副腎皮質からのステロイド分泌が慢性的に生体の必要量以下に低下した状態で、両側副腎皮質の少なくとも90%以上の破壊により発症します。アジソン病の病因は、[1]特発性、[2]感染性(結核、真菌など)、[3]ガンの副腎転移、などが主であり、まれに先天性のものがありますが、大半が特発性と結核性によるものです。特発性とは原因不明の副腎萎縮をこう呼んでいましたが、最近では血中に抗副腎抗体がみられることが多いことなどから、自己免疫性副腎炎であるとも考えられています。

[症状]

 副腎ホルモンの欠乏による症状として、全身倦怠感、脱力感、筋力低下、体重減少、食欲不振、低血圧、低血糖、精神症状(無気力、不安、性格変化)、色素沈着(皮膚、粘膜、爪、舌、口腔粘膜など)、月経異常、体毛脱落(女性)などがありますが、症状は通常徐々に始まり、程度も個々で異なるため症状がはっきりしない例から著しい症状を示す例まであります。

[診断]

・ホルモン検査など
 上記の症状、とくに色素沈着、倦怠感、低血圧などから本症を疑い、ホルモン検査をすることが重要です。内分泌ホルモン検査では血中コルチゾール値の低下と血中ACTH値の増加、ACTHに対するコルチゾールの反応がないことなどがみられます。なかにはコルチゾールの基礎分泌は保たれていても分泌予備能が低下している例があり、こうした例ではACTHに対する反応が低下しており、部分的(partial)アジソン病といわれます。自己免疫性副腎炎が原因と考えられる場合、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、糖尿病などを合併する例があるので検索する必要があります。

・画像診断
 アジソン病の病因鑑別のために副腎CTが有用なことがあり、副腎結核の場合に副腎の石灰化や腫大(しゅだい)像を認めることがあります。特発性では正常に見えることが多いですが、萎縮がわかる例もあります。ガンの転移などでも腫大した副腎がみられます。その他、特異的に副腎皮質に取り込まれる副腎シンチグラフィーでは副腎部に集積を欠き、診断の参考になります。

[標準治療]

 ホルモンの補充療法として副腎皮質ホルモンの投与を行います(グルココルチコイドを服用)。発熱、抜歯、軽傷の外傷などの軽度のストレス状態では服用量を2~3倍に増量させます。しかし、手術、分娩、重症の外傷などの重度のストレス状態では時として急性副腎皮質不全(副腎クリーゼ)を起こすことがあります。副腎クリーゼはアジソン病の重度のストレスなどによる急性悪化のほかに敗血症、副腎皮質の出血、外傷などにより起こります。また、グルココルチコイド投与中の急激な減量や中止などによっても起こるので、服用量変更や中止などについては医師とよく相談して決める必要があります。
 このような副腎クリーゼの症状は強い脱力感、嘔吐、下痢などの消化器症状、血圧低下、低血糖症状、発熱をきたし、放置すればショックに陥り死亡に至る危険性が高い疾患です。クリーゼの場合の治療については、グルココルチコイドの点滴静脈内注射が原則であり、また、低血圧、脱水、ショック状態に対して生理食塩水、ブドウ糖などの輸液が必要になります。しかし適切にホルモン補充療法を続ければ正常と変わらない生活が可能です。副腎不全症状の改善、色素沈着の改善、早朝ACTH濃度が80pg(ピコグラム)/mlとなるように投与量を調節します。

●標準治療例
[1]グルココルチコイド補充
 ・コートリル  1錠10mg 1日20mg起床時服用 または起床時15mg、午後5mg服用
 ・デカドロン  1錠0.5mg 就寝時に服用 症状によりコートリル5~10mgを夕方追加
 ・プレドニン  1錠5mg 就寝時に服用 症状によりコートリル5~10mgを夕方追加
 デカドロン、プレドニンのほうが血中濃度の動きが穏やかでコントロールしやすい例も多いので、症例により薬剤の種類と量、投与方法を調節します。

[2]ミネラルコルチコイド補充
 食塩摂取量を多くすることで十分な場合がほとんどですが、低ナトリウム血症や低血圧が改善されない場合はミネラルコルチコイドを補充します。
 ・フロリネフ  1錠0.1mg 1日1錠服用
 〈発熱、ストレス時:数日間、グルココルチコイドを2~3倍に増量、ミネラルコルチコイドは同量で維持させます〉

[生活上の注意/予防]

 まず適切なグルココルチコイドの服用が重要です。一生涯服用が必要ですが、適切な服用を続ければ正常と変わらない生活が可能です。ただ、ストレス時にはストレスの強度に応じた服用量の増量が必要であり、場合によっては病院での緊急治療が必要になることがあります。これらの点についてよく認識し、医師とも緊急時の対応について相談しておく必要があります。場合によっては緊急時に備えて、病名、治療法、連絡先などを記載したカードを携帯することもあります。
 いずれにしても治療開始後も定期的な経過観察が必要です。この疾患自体は予防できるものではありませんが、似た症状に注意して検査すれば早期に発見治療できるものと考えられます。
執筆者
田嶋紀子(たじま のりこ)
山王病院内科部長(糖尿病・代謝領域)

【出生年】1953年
【出身校】東京女子医科大学大学院(1985年卒)
【専門】内分泌・代謝
【得意分野】甲状腺疾患、糖尿病
【外来日】月(午前)、火(午前)、水(午前・午後、午後有料予約あり)、木(午後、午後有料予約あり)、金(午前・午後、午後有料予約あり)
【メモ】その患者さんにとって、最も望ましい医療は何かということを常に意識して診療にあたるよう努めています。
【長所】患者さんの気持ちになって考えるよう努力している。
【短所】待ち時間が長くなりがち。
【引用・参考文献】
 総監修:寺下 謙三 家庭のドクター標準治療 日本医療企画