医学書
アトピー性眼症
[受診のコツ]
発症頻度:★(まれにみる)
初診に適した科:眼科
初期診断・急性期治療に適する医療機関:外来診療所/小中規模病院/特殊専門病院・研究機関病院(大学病院)
安定期・慢性期治療に適する医療機関:外来診療所/小中規模病院
入院の必要性:外来で可能
薬物治療の目安:中~長期に及ぶことが多い
手術の可能性:まれ
治療期間の目安・予後:治療期間が中~長期(数ヶ月~数年)に及ぶことが多い
診断・経過観察に必要な検査:血液/その他
その他必要な検査:その他()
※受診のコツは、典型的なケースを想定して総監修者・寺下謙三が判断したものです。実際のケースでは異なることがありますので、判断の目安としてお役立てください。なお、項目はあらかじめ全疾患を通して用意された選択肢から判断したものです。
初診に適した科:眼科
初期診断・急性期治療に適する医療機関:外来診療所/小中規模病院/特殊専門病院・研究機関病院(大学病院)
安定期・慢性期治療に適する医療機関:外来診療所/小中規模病院
入院の必要性:外来で可能
薬物治療の目安:中~長期に及ぶことが多い
手術の可能性:まれ
治療期間の目安・予後:治療期間が中~長期(数ヶ月~数年)に及ぶことが多い
診断・経過観察に必要な検査:血液/その他
その他必要な検査:その他()
※受診のコツは、典型的なケースを想定して総監修者・寺下謙三が判断したものです。実際のケースでは異なることがありますので、判断の目安としてお役立てください。なお、項目はあらかじめ全疾患を通して用意された選択肢から判断したものです。
[概説]
アトピー性皮膚炎の患者さんが大変多くなっていますが、最近、重症の患者さんに、目の病気を合併する人が多いことがわかっています。その原因はよくわかっていませんが、増加傾向にあり注目されています。以前は小児の病気と思われていましたが、最近は成人にもみられ重症化しています。
アトピー性皮膚炎の患者さんがかかりやすい目の病気は、白内障、網膜剥離、角結膜炎と春季カタル、円錐角膜があります。なかには著しく視力を損なう病気、失明に至るもの、それが若い時から急速に進むものがあるので、日頃から皮膚症状のある人は目の定期的な検査を心がけて下さい。
アトピー性皮膚炎の患者さんがかかりやすい目の病気は、白内障、網膜剥離、角結膜炎と春季カタル、円錐角膜があります。なかには著しく視力を損なう病気、失明に至るもの、それが若い時から急速に進むものがあるので、日頃から皮膚症状のある人は目の定期的な検査を心がけて下さい。
[症状]
アトピー性眼症でみられる症状は、アトピー性皮膚炎に合併した目の病気の、それぞれのものです。
・白内障
水晶体の白濁による眼のかすみと視力低下。
・網膜剥離
剥離した部分の網膜の機能低下や消失による、飛蚊(ひぶん)症や視野欠損、視力低下。
・角結膜炎・春季カタル
アレルギー性角結膜炎の強い時と同じ症状で、結膜の充血、腫れ、めやに、強いかゆみ、ゴロゴロした痛み、眼瞼(がんけん)のかゆみ・充血・腫れ。
・円錐角膜
本来、ドーム状の半円球型をした角膜の頂点が鋭く前方に突出し、円錐状にとがってくる病気で、アトピーの重症な人にも合併することが知られています。かなり凸凹した乱視が強くなったり、角膜の突出部が白濁して視力が低下します。
・白内障
水晶体の白濁による眼のかすみと視力低下。
・網膜剥離
剥離した部分の網膜の機能低下や消失による、飛蚊(ひぶん)症や視野欠損、視力低下。
・角結膜炎・春季カタル
アレルギー性角結膜炎の強い時と同じ症状で、結膜の充血、腫れ、めやに、強いかゆみ、ゴロゴロした痛み、眼瞼(がんけん)のかゆみ・充血・腫れ。
・円錐角膜
本来、ドーム状の半円球型をした角膜の頂点が鋭く前方に突出し、円錐状にとがってくる病気で、アトピーの重症な人にも合併することが知られています。かなり凸凹した乱視が強くなったり、角膜の突出部が白濁して視力が低下します。
[診断]
かゆみと、汗がたまったり、こすれあう部分にカサカサした皮膚がみられるアトピー性皮膚炎の人で、前述の症状を自覚したら、アトピー性眼症を疑って眼科を受診して下さい。
角結膜炎・春季カタルや円錐状角膜では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で、スリット状の光を斜めに投射して前眼部を観察します。円錐角膜や白内障・網膜剥離では、さらに屈折や視力検査をします。
白内障と網膜剥離ではさらに散瞳して、眼底を含め、眼球内部を詳しく検査します。あわせて眼圧も測定しますが、ステロイドの内服や軟膏・点眼をしている場合、ステロイド緑内障の人は眼圧が上昇するので必ず検査します。
角結膜炎・春季カタルや円錐状角膜では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で、スリット状の光を斜めに投射して前眼部を観察します。円錐角膜や白内障・網膜剥離では、さらに屈折や視力検査をします。
白内障と網膜剥離ではさらに散瞳して、眼底を含め、眼球内部を詳しく検査します。あわせて眼圧も測定しますが、ステロイドの内服や軟膏・点眼をしている場合、ステロイド緑内障の人は眼圧が上昇するので必ず検査します。
[標準治療/予後]
1)角結膜炎・春季カタル・アトピー性眼瞼皮膚炎
[1]軽 症
抗アレルギー剤(インタール・リザベン)点眼 1日4~5回 1回1~2滴
抗ヒスタミン剤(リボスチン)点眼 1日4~5回 1回1~2滴
[2]中等症
ステロイド剤点眼 1日4回(0.1%フルメトロン~0.1%リンデロン) 1回1~2滴
[3]重 症
ステロイド眼軟膏(ネオメドロールEE、リンデロン) 1日3~4回
注)眼瞼皮膚も皮膚科用軟膏では吸収がよすぎるし、目に入ると刺激も強いので、眼軟膏にする必要があります。
2)白内障
10代の頃から水晶体の混濁が急速に進行することがあります。長期または大量のステロイド治療での合併症として加わることがあります。原因はよくわかっていませんが、かゆみをこらえるため目をたたいたり、こすり続けていることも一因と考えられています。
治療は、一般の白内障と同じで手術をします。同時に眼内レンズ移植も行いますが、術後にも目を強くこすると眼内でレンズがずれることや網膜剥離が起こりやすいため、眼内レンズを入れずに術後の視力を眼鏡やコンタクトレンズで矯正することがあります。
3)網膜剥離
日本人では、10~30歳代のアトピー性皮膚炎の人に、裂孔原性網膜剥離を合併する人が増えています。かゆみに耐えるために目を強く押さえたり、たたいたりすると起こりやすくなるので注意して下さい。網膜剥離は失明につながることが多いので、速やかな手術治療が必要です。また、再発しやすいので術後も継続的に受診して下さい。
4)円錐角膜
多くの場合、ハードコンタクトレンズによる視力矯正で様子をみます。進行したり、春季カタルが強く、コンタクトレンズが使えない場合、手術治療をします。
・手術
(a)角膜熱形成術
突出した角膜にアイロンをかけるようにして、平面を作り、コンタクトレンズがのせられるようにします。
(b)角膜移植術
角膜が薄くなって破れるような時に行います。
[1]軽 症
抗アレルギー剤(インタール・リザベン)点眼 1日4~5回 1回1~2滴
抗ヒスタミン剤(リボスチン)点眼 1日4~5回 1回1~2滴
[2]中等症
ステロイド剤点眼 1日4回(0.1%フルメトロン~0.1%リンデロン) 1回1~2滴
[3]重 症
ステロイド眼軟膏(ネオメドロールEE、リンデロン) 1日3~4回
注)眼瞼皮膚も皮膚科用軟膏では吸収がよすぎるし、目に入ると刺激も強いので、眼軟膏にする必要があります。
2)白内障
10代の頃から水晶体の混濁が急速に進行することがあります。長期または大量のステロイド治療での合併症として加わることがあります。原因はよくわかっていませんが、かゆみをこらえるため目をたたいたり、こすり続けていることも一因と考えられています。
治療は、一般の白内障と同じで手術をします。同時に眼内レンズ移植も行いますが、術後にも目を強くこすると眼内でレンズがずれることや網膜剥離が起こりやすいため、眼内レンズを入れずに術後の視力を眼鏡やコンタクトレンズで矯正することがあります。
3)網膜剥離
日本人では、10~30歳代のアトピー性皮膚炎の人に、裂孔原性網膜剥離を合併する人が増えています。かゆみに耐えるために目を強く押さえたり、たたいたりすると起こりやすくなるので注意して下さい。網膜剥離は失明につながることが多いので、速やかな手術治療が必要です。また、再発しやすいので術後も継続的に受診して下さい。
4)円錐角膜
多くの場合、ハードコンタクトレンズによる視力矯正で様子をみます。進行したり、春季カタルが強く、コンタクトレンズが使えない場合、手術治療をします。
・手術
(a)角膜熱形成術
突出した角膜にアイロンをかけるようにして、平面を作り、コンタクトレンズがのせられるようにします。
(b)角膜移植術
角膜が薄くなって破れるような時に行います。
[特殊治療]
最近、春季カタルなど重症の角結膜炎では、従来からのステロイド(ケナコルト)の眼瞼結膜下注射のほかに、免疫抑制剤のタクロリムスの点眼薬が臨床導入間近になりました。
生活上の注意
目のかゆみを我慢するかわりに、眼球をたたくようなことが重篤(じゅうとく)な視力障害を招くこともある目の病気を発生させるので、専門医に早くから相談して適正な治療をしましょう。また、少しでも目の異常を感じたら、早く受診し、定期検査を受けて下さい。また、ステロイドなど、強い薬の副作用を恐れるあまり、症状を重くして強い薬を使わざるをえなくならないように十分な説明を受けて、正しく治療を続けて下さい。

執筆者
林清文(はやし きよふみ)
ハヤシ眼科クリニック理事長/横浜市立大学眼科非常勤講師

【出生年】1951年
【出身校】東京大学(1978年卒)
【専門】眼科学
【得意分野】ぶどう膜炎の診断と治療
【外来日】クリニックとしては、年末年始以外、年中無休。院長診察は木曜日を除く月~土曜日。できれば電話で確認をお願いします。予約は不要。紹介状はあったほうがよいですが、なくても可。第2・第4木曜日午後は、横浜市立大学附属病院眼科で「ぶどう膜炎クリニック」(予約制)にて診療。
【メモ】診療におけるモットーは、患者さんが安全かつ効果的な診療結果を得るためには、自分の状態・診療方針がわかっていて、主体的に取り組めなくてはいけません。そのためには主治医が標準から最新の治療の知識をわかりやすく説明し、納得してもらう必要があります。その努力は惜しみません。個人的なモットーは、【1】人生一期一会。たった一度の出会いに終わることもあるので、その瞬間、機会を大切にする。【2】初志貫徹ではなく、初心忘るべからず。初めての感動を忘れずにいること。途中でより良いことがあれば、改めるのに躊躇しないこと。
【長所】何でも相談しやすい。わかりやすい説明をていねいに行う。
【短所】必要と思われることは、わかってもらうまで何度でも話すこと。患者にとって耳の痛いことでも、はっきりいうこと。
ハヤシ眼科クリニック理事長/横浜市立大学眼科非常勤講師

【出生年】1951年
【出身校】東京大学(1978年卒)
【専門】眼科学
【得意分野】ぶどう膜炎の診断と治療
【外来日】クリニックとしては、年末年始以外、年中無休。院長診察は木曜日を除く月~土曜日。できれば電話で確認をお願いします。予約は不要。紹介状はあったほうがよいですが、なくても可。第2・第4木曜日午後は、横浜市立大学附属病院眼科で「ぶどう膜炎クリニック」(予約制)にて診療。
【メモ】診療におけるモットーは、患者さんが安全かつ効果的な診療結果を得るためには、自分の状態・診療方針がわかっていて、主体的に取り組めなくてはいけません。そのためには主治医が標準から最新の治療の知識をわかりやすく説明し、納得してもらう必要があります。その努力は惜しみません。個人的なモットーは、【1】人生一期一会。たった一度の出会いに終わることもあるので、その瞬間、機会を大切にする。【2】初志貫徹ではなく、初心忘るべからず。初めての感動を忘れずにいること。途中でより良いことがあれば、改めるのに躊躇しないこと。
【長所】何でも相談しやすい。わかりやすい説明をていねいに行う。
【短所】必要と思われることは、わかってもらうまで何度でも話すこと。患者にとって耳の痛いことでも、はっきりいうこと。
【引用・参考文献】
総監修:寺下 謙三 家庭のドクター標準治療 日本医療企画
総監修:寺下 謙三 家庭のドクター標準治療 日本医療企画