先生の声
風邪の時、なぜりんごを食べるの?

風邪にりんごは効果あるの?

今回は「風邪にりんごは効果があるのか」という事について話をしてみます。
こどもの頃に風邪をひくとすりおろしたリンゴやりんごジュースを飲んだ方は私だけではないと思います。今時のお母さんはいかがでしょうか。
西洋では古くから民間療法として「1日1個のトマトは医者を遠ざける」、日本では「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われてきました。りんごではあまり聞きませんが、日本でも古くからおばあちゃんの知恵として「風邪にりんご」といわれています。これって本当でしょうか。

医学の立場から考えますと、りんごがお薬として出されることはありません。もしお医者さんが風邪に対して医学的効果があると言ってりんごを処方していることがあっては、ちょっとまずいかもしれません。また効果があったという実験では、1日に「食べきれないほどの量のりんごを食べると」という前提だったりすることもあります。

ではなぜこんなことが言われるのでしょうか。
まずりんごの栄養成分について考えてみましょう。りんごのそのほとんどは水分です。りんご1個に含まれる糖分はどうでしょうか、りんご1個で茶碗に1杯程度の糖質を含みます。これは角砂糖14個分、コーラ1本分です。カロリーとしては150キロカロリー程度でしょうか。糖質の種類は果糖、ショ糖、ブドウ糖などでしょう。りんご1個の摂取で多くの水分と約30〜35g程度の糖質を摂ることができます。特にブドウ糖はすぐにエネルギーに変換することもできて低血糖状態にはとても有効です。
風邪をひいて発熱している時には食欲が低下してしていることが多く、こどもでは特に低血糖の状態になりやすいので、その際の水分とエネルギーの補給としてはかなり有効な食物と言えます。

他にどのような栄養が含まれているでしょうか、食物繊維、ミネラルのカリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、ビタミンC等があります。風邪に効くとされるビタミンCの含有量はそれほど多くはありません。
食物繊維は皮の部分に多く、腸の動きを活発にして、消化や吸収、整腸を促し、下痢などの症状には緩徐ではありますが有効です。その他のミネラル、ビタミンについては特に多いというわけではありませんが、これらは摂れば良いと言うものではなくバランスが大事です。その他にりんごはクエン酸やリンゴ酸を含んでおり、疲労の回復にも効果はありそうです。ポリフェノールに至っては100種以上を含むようです。

このようなことより、風邪の時にりんごは効くの?と問われれば、風邪に直接効果はありません。しかし風邪の時に起こる、体の不調を補ったり、整えたりする効果はありそうです。ただしこれは「りんご」であって多くの市販りんごジュースでは効果は限定的です。効果を期待するならばやはり、りんごは丸ごと皮まで摂取し、足りない成分は他の食品を加えて摂るとより効果的であると言えます。そのためにもりんごはすりおろしたり、ジューサーのようなもので摂取するのがさらに良いと思います。
執筆者
かやば小児科医院 萱場 潤 院長
住所:仙台市若林区中倉1-11-3
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