先生の声
周産期医療とコロナウイルス感染症

周産期医療とコロナウイルス感染症

 妊婦さんが免疫学的にコロナウイルスに感染しやすいということはありません。同世代の一般女性とリスクは同等です。従って感染を防ぐために大事なことは、手洗いやマスク着用はもちろんですが、無用な外出を控え人との接触を減らし、いわゆる3密を避けることです。

 このため産科医療機関では現在、妊婦健診の間隔を延ばしたり、分娩の立会や面会を制限したり、母親教室等の開催を見合わせたりしています。感染予防のためのサービス制限ですので、担当医の指示に従うようお願いします。またご自身の体調管理のため毎日の体温測定もおすすめします。特に里帰り出産時には、帰省後すぐに医療機関を受診するのではなく、帰省先で2週間外出を控えて毎日の体温測定を行い、体調に変化がないことを確認してから医療機関を受診するようにしてください。

 感染を防ぐためには、3密を避け病気に対する抵抗力を維持することが重要です。そのためには、妊婦さんも十分な休養と睡眠をとり、適切な食事と運動をするよう心がけてください。


画像「出典:首相官邸HPより」

感染もしくは感染の疑いが生じた際にどう対応すべきか

 妊婦さんで風邪症状、37.5度以上の発熱が2日以上続く場合や倦怠感、呼吸困難、味覚・嗅覚の異常がある場合には直接かかりつけ医療機関を受診するのではなく、「新型コロナウイルス感染症コールセンター(Tel:022-211-3883、2882)」に相談して指示を仰いでください。

 PCR検査で陽性が確認された妊婦さんは、法律に基づき指定された医療機関での入院管理が必要となります。感染した妊婦さんがかかりつけ医療機関を直接受診してしまいますと、感染が拡大し、受診された医療機関の診療が継続できなくなるリスクがありますのでご注意願います。

 感染した妊婦さんの分娩は、県内の周産期施設が必要に応じて調整を行い安全・安心な分娩が実現できるよう宮城県周産期医療コロナ対策本部会議で検討しています。

母子感染や治療薬に関して

 海外では子宮内での胎児感染や新生児肺炎が報告されていますが、重篤な胎児の異常や奇形、死産や流産を起こしやすいとの報告はありませんので、過度の心配は不要です。しかしながら現時点では妊娠の有無にかかわらず、新型コロナウイルスの特効薬やワクチンはありません。

 臨床試験が進行している「アビガン」は催奇形性のため妊婦さんには禁忌です。「吸入ステロイド剤」も試験が進行中ですが、副作用もあり妊婦さんには慎重な投与が求められます。「BCG」は生ワクチンのため妊娠中の接種はできません。従って妊婦さんでは感染予防が一番重要になります。また解熱剤の「イブプロフェン」は安全性が確認されておらず、妊娠中の投与は避けるべきとされており、比較的安全な「アセトアミノフェン」の使用が勧められています。

 分娩に関しても感染予防のために、感染中の妊婦さんや感染が強く疑われる妊婦さんでは、帝王切開を行わざるを得なくなることがあります。また授乳も、お母さんの状態で、新生児への感染を防ぐために、搾乳や人工乳が考慮されることがありますので、各医療施設の管理方針を確認してください。


画像提供:国立感染症研究所

最後に

 我々産科医は妊婦さんの安全・安心を護るため、今後も全力を尽くしてまいります。不安なことがある場合は、どうぞ電話などでかかりつけ医にご相談ください。


谷川原院長のインタビュー動画も掲載してます。
こちらも合わせて、ご覧ください。
(https://miyagi.doctor-search.tv/voicedetail/MIYAGI-DVOICE-5000009)
執筆者
スズキ記念病院
病院長 谷川原 真吾 先生
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