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においと頭痛との関係

においと頭痛との関係

 みなさんは「香害」という言葉をご存知でしょうか。
 強い香りによって、頭痛、呼吸困難、くしゃみ、せき、倦怠感などの健康被害が生じることで、近年、注目されるようになっています。身のまわりには香水、芳香剤、洗剤、柔軟剤など、本来は良い香りとされている「におい」があふれていますが、どうやらこれらの中に含まれる、化学物質が体調不良の原因になっているようです。
 香害によって学校や職場に行けなくなる事例もあり、社会問題の一つともなっています。
 頭痛患者さんにも、においが苦手という方が少なくありません。今回は「においと頭痛」の関係について、これまでの科学的な論文や報告も紹介しながら考えてみたいと思います。

香害の実態

 2000年代半ばより香りの強い洗濯洗剤や柔軟剤が増加していますが、年々、それら製品による体の不調を訴える相談が増えています。

 実際、特定非営利活動法人日本消費者連盟が2017年7月と8月の2回にわたって、においに関する苦情を受けつける「香害110番」を実施していますが、最も多かった訴えが、近隣の洗濯物のにおいでした。

 また、20代から50代の女性を対象に行なわれた「香り付き洗濯洗剤に関する調査(2016年シャボン玉石けん株式会社調べhttps://www.shabon.com/kougai/)」では、香り付きの洗濯洗剤を使用している人が88%、人工的な香りを嗅いで、頭痛やめまい、吐き気などの体調不良を起こす香害が問題になっているのを聞いたことがある人が51%、人工的な香料のにおいで、頭痛やめまい、吐き気、関節痛など体調不良になったことがある人が49%と報告されています。

においが頭痛を誘発してしまう!?

 日常生活で頭痛が引き起こされるきっかけは様々であり、個人差や頭痛の種類によっても異なりますが、代表的なものに、特定の食べ物、ストレスやストレスからの開放、天候や天候の変化、まぶしい光、点滅する光、暑さ、寒さ、運動、性交、不規則な食事や断食、脱水、寝すぎ、睡眠不足、休日、アルコール、薬物、ホルモンの変化、特定の頭の動作、かぜなどの病気、などがあり、その中に臭気やにおいも含まれています1)。

 それでは実際、どのようなにおいが頭痛のきっかけになっているのでしょうか。
 2016年に米国頭痛学会誌に掲載された論文によると、片頭痛患者さんの90%が、においで頭痛が誘発されており、その原因の内訳は、香水が95%、洗剤や柔軟剤が81%、たばこが71%、自動車内のにおいが70%で、次いでゴム、革製品、コーヒー、魚のにおいであったと報告されています2)。また、片頭痛発作中には、においに対して敏感になってしまうことがありますが、におい過敏の対象で多かったものは、香水が88%、洗剤や柔軟剤が70%、たばこが68%、排気ガスが62%であったと同じ論文で報告されています。このように、一般的に良い香りとされているものの方が、頭痛を誘発し、また頭痛中のにおい過敏の原因として影響を与えることが多かったようです。

においとの関係で頭痛のタイプが分かる!?

 頭痛の種類はとても多く、その診断基準になっている国際頭痛分類第3版によると、頭痛は細かく300種類以上に分類することができます3)。では、どのような頭痛がにおいとより深い関係にあるのでしょうか。

ブラジルからの報告ですが、158人の頭痛患者さんに花のにおいの芳香剤を嗅いでもらったところ、片頭痛患者さんの34.7%で頭痛が誘発され、片頭痛以外の患者さんでは頭痛が全く誘発されませんでした4)。

 ちなみに、頭痛はにおいを嗅いでから約2時間後に起きたそうです。また、片頭痛と一緒に出現する症状として、悪心、嘔吐、光過敏、音過敏、におい過敏が知られていますが、この中でもにおい過敏は特異度が最も高く、これは「におい過敏を自覚する頭痛患者さんのほとんどは片頭痛で間違いない」ということを意味しています5)。

自分の「におい」点検

国内では10人に約1人は片頭痛もちであるとされていますが、片頭痛は頭痛が起きてしまうと嘔吐したり、寝込んでしまったりと日常生活に支障をきたすことが多い病気です。

 片頭痛が、特ににおいとの関係が密接であることをお分かり頂けたでしょうか?

 特に湿度や気温が高くなる季節、体臭など周りを不快な思いをさせるにおいについて意識し、ケアをすることは社会人としてのマナーです。しかし、今回ご紹介したように、良かれと思って使っている香水や洗剤、柔軟剤が、実は香害の原因になっていることもあります。

 あなたは大丈夫ですか?ご自身の「においの使い方」を再度点検してみてはいかがでしょうか?

参考文献

1) Schulte LH, Jurgens TP, May A. Photo-, osmo- and phonophobia in the premonitory phase of migraine: mistaking symptoms for triggers? J Headache Pain. 2015;16:14.
2) Fornazieri MA, Neto AR, de Rezende Pinna F, Gobbi Porto FH, de Lima Navarro P, Voegels RL, et al. Olfactory symptoms reported by migraineurs with and without auras. Headache. 2016;56(10):1608-16.
3) 国際頭痛分類第3版,日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会(訳), 医学書院, 東京, 2018年
4) Silva-Neto RP, Rodrigues AB, Cavalcante DC, Ferreira PH, Nasi EP, Sousa KM, et al. May headache triggered by odors be regarded as a differentiating factor between migraine and other primary headaches? Cephalalgia. 2017;37(1):20-8.
5) Terrin A, Mainardi F, Lisotto C, Mampreso E, Fuccaro M, Maggioni F, et al. A prospective study on osmophobia in migraine versus tension-type headache in a large series of attacks. Cephalalgia. 2019:333102419877661.
執筆者
仙台頭痛脳神経クリニック院長:松森 保彦
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