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夏の首の痛み

夏のオフィスと首の痛み

 首に感じる痛みやこり、一般にそれは寒い冬に多いといわれています。首には頭に行く太い血管が通っていることから、ヒトが温度を感じるセンサーのような役割を担っていて、確かに寒さには敏感なのですが、気温の高い夏の時期にも首の症状を訴えて整形外科を受診される方が意外に多く見られます。

 そのメカニズム、整形外科での首(頚椎)の病気の見方、対処や治療の方法について、お話ししたいと思います。

首の痛みをどう区別?

 一口に首の痛みと言いましても、その原因は様々です。整形外科では大まかに次の3つに分けて考えることにしています。

① 首~肩の筋緊張が強くなる「こり」。
診察してみて、首の動きは全く制限がない、そして手足のシビレがないのに首が痛い、というのがこれです。この場合の痛みやこりは、湿布薬の宣伝文句にあるように、首~両肩~両肩甲骨に漢字の「介」の字を描く形で広がり、ひどい時には頭痛も伴います。レントゲン写真では首の骨の前弯がなくなる「ストレートネック」がよく見られます。

② 頚椎の病気による首の痛み。
頚椎の椎間板が擦り減るなど、主に加齢による変化(変性)が原因となるもので、この場合には首の動きが悪くなるのが特徴です。ただし、頚椎の神経(骨髄や神経根)が圧迫されて手足の障害が生じる病気が起きても、必ずしも首の痛みを伴わないことがある点、注意が必要です。

③ 頚椎以外の病気で首が痛くなることもあります。
心筋梗塞や狭心症では左の肩こり、胆石症では右の肩こり、脳動脈瘤では後頚部痛が出ますし、五十肩でも肩こりを伴います。

夏のオフィスでなぜ首痛?

 長時間のデスクワークや重い書類の整理で首の筋肉が固くなることは言うまでもありませんが、気温の高い夏にどうして首痛が増えるのか?

 これにはまず、オフィスの冷房が大きく関わっています。温度設定が低すぎる、冷風の吹き出し口が首のすぐ後ろにあるといったことがよくあります。クールビズでの薄着、またパソコンのディスプレイの位置も関係あるようです。

 長時間目線を下に向けていると(あのスマホ首のように)筋肉の疲労・緊張が高まり、最近のテレワークで自宅のエアコンやパソコンの位置がオフィスと違っただけで首がこるようになった患者さんも散見されます。  オフィスの涼しい室内と暑い屋外の往復が多い場合、また冷房の効いた車での営業で乗降の際の温度差も、肩こりの原因となります。 またメンタルの要素もあり、猛暑下あるいはコロナ禍での仕事のストレスや上司のパワハラなども、肩こりの原因となることは言うまでもありません。

「痛みの原因は生活の中にあり」というのが整形外科の常識ですが、オフィスの環境や行動パターンの見直しが解決の第一歩となると考えています。

 例えば、冷風の吹き出し口が首のすぐ後ろにある場合は、ブランケットを首・肩の周りにかけることで直接的に冷風が当たることを避ける、ディスプレイ位置を目線より高い場所に置き換える、オフィス内や車内の温度を少し上げる、などから試してみてください。また、熱中症予防の為に首を冷やすミニファンは、一日中室内で使用していると、冷え過ぎて首痛の原因となる場合もある為、注意しましょう。

首の痛みの治療について

 すでに書きましたように、頚椎の病気、あるいは他の内臓の病気が原因となっている場合には、その治療が優先されます。そのような原因のはっきりしない、普通に見られる首痛や肩こりの治療はどうするのか?

 デンキで首を温めたり、首を牽引したり、注射をしたり、薬を処方したりするのが一般的に行われている治療ですが、それ以上に前述した環境要因を示し、その対処を一緒に考えたり指導をしたりすることが、より大切と考えています。

 こうした首痛の治療を受けるに際して留意していただきたいことを2,3お話しますと、まず整形外科といっても専門分野が多岐にわたり、脊椎の専門医でないと大事な病気が見逃されたり誤診されたりすることがあります。

 脊椎の診療に長けた医院であるかを事前にWebサイトや電話等で確認してから受診することをオススメします。
 またマッサージや牽引にある程度の効果はあるものの、強すぎる手技は反って首痛を強めたり、隠れた神経障害を顕在化または悪化させることがあります。そのため、過度のマッサージや牽引を行うことは控えることをオススメします。

 もちろん、頚椎以外の病気(前述)も常に念頭に置いておく必要があります。

こりと局所注射

「こり」に関連して、最近注目されている「筋膜リリース」。

 筋膜リリースとは、慢性的な肩こりを起こしている首、肩の筋肉を超音波検査(ECHO)で調べると、筋肉を覆う筋膜、あるいは筋線維同士の癒着が認められる部位に、生理的食塩水を注射で注入するだけで癒着が剥れ、肩こりが改善する、というものです。

 整形外科では昔から、肩こりの圧痛部位に局所麻酔剤を注射する局所注射(通称:局注、現在は圧痛点ブロック)が行われてきましたが、一部では「一時的な効果だけで気休めだ」という意見もありました。
しかし、私の経験からも2時間弱といわれる麻酔薬の効果が切れた後も数日間効果が持続する患者さんも多くいました。今回、生理的食塩水による「筋膜リリース」のメカニズムが示されたことで、局所注射も効果的な施術方法の一つであると証明されたため、より患者様が安心いただけるようになったと考えています。

 ただし、全例がこの治療でよくなる訳ではありませんし、注射部位の感染の可能性もあります。またこの治療にこだわる余り、他の病気を見逃すことのないよう配慮が求められます。

読者の皆さまにメッセージ

 首の痛みを感じたら、自分で判断せずに、まずは首の痛みを専門的に治療する医院(例:脊椎外科、脳神経外科等)で問診を受けることが大切と考えます。自分の判断で、マッサージや牽引を過度に行ってしまうと前述の通り、症状を悪化させてしまう場合もあります。また、よく肩こりと五十肩を混同する方がいますが、五十肩では肩関節の動きが制限されることが特徴であるため、正しく診断を受ければ比較的容易に両者の区別ができるため、適切な処置を早く受けることも可能になります。

気温の高い日が続く夏、様々な熱中症対策をされて過ごされるかと思いますが、首の冷やしすぎは首痛を起こす原因となる為、気を付けましょう。痛みを感じたら、まずは医院に相談することをオススメいたします。
執筆者
瀬上整形外科医院 院長:瀬上 正仁
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