先生の声
睡眠不足にご用心!睡眠と感染症と心身の健康

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今回は「睡眠と感染症と心身の健康」について、
医療法人SOUND SLEEP 仙台内科睡眠クリニック 田中理事長にインタビューしました。
(取材日 2021年6月4日)

睡眠の感染症や身体への影響は?

 睡眠は頭と体の疲れを回復させるシステムです。
 寝ることによって免疫機能が高くなるのでウイルスに感染しづらくなりますし、ウイルスに感染した場合でも、ゆっくり寝ることで治りやすくなることもあります。

 睡眠時間は人によって必要な時間が異なるため、朝起きてスッキリしていて、昼間に眠たくなければ良いのですが、基本的に日本人の平均睡眠時間は「7時間前後」と世界でも最も短いとされています。
 日本人は睡眠時間を削って働いている方が多いので、もう少し寝るようにした方が良いと思います。

 睡眠は、頭と体の疲れを回復させます。睡眠時間が足りないと、朝起きても疲労物質が残り、人によっては「頭が痛い」「頭が重い」「ぼーっとする」「眠気がある」「疲れが取れない」「すっきりしない」気持ちがイライラする」「落ち込む」ということが起こるため、気持ち(心)にも大きな影響を及ぼします。

 最近中学生でもスマホを使うようになっていますが、スマホ毎日4時間以上使うような方は寝る時間が遅くなります。そうすると、なかなか朝起きられないということが起こり、遅刻が多くなったりします。また気持ちの問題として、イライラする・キレやすいという人の割合も増えてきます。

 今回コロナの影響でテレワークが、だいぶ進んでいます。それよって、皆さん通勤で1~2時間程度使っていた時間が「自分の時間」となりました。その自分の時間を何に使っているかというと、大抵の日本人は普段、睡眠時間を削っていましたので「寝る時間」が増えています。今回のテレワークにより、日本人の慢性的な「睡眠不足」が横行していたと、改めて分かりました。

■良い睡眠に大切な事は?

 睡眠には「光・食事・温度」が大きな影響を与えます。
 朝に強い光を浴びると、夜に「寝るホルモン」が出るわけです。一方、夜は弱い光であっても浴びることによって、眠りを妨げることになります。寝るホルモンは「メラトニン」という光依存性の物質で、これは光を浴びることで出なくなってしまいます。
 また朝は光を浴びるといっても、部屋の光の量では足りません。普通のオフィスの光の量が300ルクス程度です。それでは足りないわけです。
 私たちが生物的に「朝起きる」ためには3,000ルクスという強い光が必要です。その強い光を浴びることによって「起きるホルモン」が出るのです。
 外の光は 曇っていても1万ルクス以上あり、真夏は10万ルクス以上ありますので、午前中に外の光を30分以上浴びると、夜に寝るホルモンが自然と増すようになります。
 また、就寝の3時間以内にカフェインを取ると、寝ることを妨げることになってしまいます。 寝るホルモン「メラトニン」の原材料が、バナナや卵に含まれる「トリプトファン」という成分がありますが、これを取ると寝るホルモンが増えるということもあります。

 寝る時には体温を下げるというのが人間の生理機能となっています。
 体温を上げれば下がる際に勢いがつくという影響がありますので、例えばカプサイシンの含まれた唐辛子やキムチを食べると体がポカポカ温まります。そこから体温が下がるときに、眠気が来ます。
 他にも生姜湯などで体を温めることで、体温を下げる勢いをつけることが出来ます。このように食事で体温を上げることにより、寝る時に向けて体温下げる勢いをつけることも有効です。

 人間は体温を「下げて」寝るので、これから夏場を迎え、熱帯夜により寝る時の気温が上がると体温を放出できないことにより、なかなか眠れない日々がやってくるかもしれません。

 ある種のエアコンには「睡眠プログラム」という寝る時に、外気温より3度ほど室温を下げる機能があります。そうすると深部体温が下がり、ぐっすりと眠れるようになります。また朝起きる1時間ほど前に、外気温よりちょっと室温を上げてくれる機能です。この機能により「ぐっすり睡眠」のスコアが35%アップしたそうです。

 冷え症の方が冬場になると血管が細くなり、体内の深部温度がなかなか下がらないわけです。人間は深部温度を下げて寝るため、手足の血管を広げてあげる事が必要になります。そのため、手足を温浴して血管を太くすることにより体温を下げることが可能となります。
 身近な例として、よく銭湯の休憩室で寝ている方が多いと思いますが、あれは一旦体温が上がるわけですよね。体温が下がる時に、眠気が来る。この効果を利用して寝ることで「深い睡眠」を取ることができます。

最後に先生からのメッセージ

 最近、朝起きてもスッキリしないことが多くないですか?そういう方の中には、昼間に仕事に集中できてない、また日常の作業で「危ない」と思う体験をした、また運転中もヒヤリ体験が多いといった方がいらっしゃいます。さらに「胸が苦しい」「血圧が高い」といった健康に影響が出ている方もいらっしゃいます。
 これら影響が出ている方たちの夜の「いびき」はどうでしょうか?かなり音が大きく、ひどい「いびき」をかいている方いらっしゃいます。 このような傾向があると「睡眠時無呼吸症候群」という、夜に息が止まる病気の可能性があります。
 この病気の一番の特徴は「自覚症状がない」ことです。

 最近朝起きてもスッキリしていないことが多くありませんか?そういった方の中には「睡眠に問題がある方」も多いかもしれません。いびき、無呼吸の傾向がある方は特に「睡眠クリニック」にご相談ください。
執筆者
医療法人SOUND SLEEP 仙台内科睡眠クリニック
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