先生の声
世界緑内障週間

日本人の失明原因の第1位を知っていますか?

 現在、日本人の中途失明原因の1位は緑内障です。かつては、糖尿病網膜症が1位でしたが、糖尿病の知名度の向上、健診の徹底、治療薬の発展などで糖尿病のコントロールが良くなってきたことで、順位が入れ替わりました。それに比べ、緑内障は、加齢により有病率が高くなるので、超高齢社会において深刻な問題となっています。近年、医学や検査機器の発展で、緑内障の診断精度が向上し、今や日本人の40歳以上の20人に1人が緑内障であることが分かってきました。さらには、緑内障は「自覚しにくい」ということが問題を大きくしています。

【白神史雄他 : 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 32, 2017より作図】

年齢的な変化だと軽く思っていませんか?

 そもそも緑内障とは何でしょう。緑内障は、眼からの情報を脳に送るケーブルである視神経が減少していき、徐々に視野が狭くなっていく病気です。重症になるまで視力(物を細かく見る力)が維持されることもあり、自覚症状に乏しいのが特徴です。実際の見え方は、進行していても下図のようにぼやける程度で、目の不調程度にしか感じない場合もあります。そして、見えにくさを感じた時にはすでに重症に至ってしまっている可能性もあるのです。目の「認知症」に例えられ、一度緑内障になってしまうと現在の医学をもってしても失われた神経を再生させられないのが現状です。そのため、早期に発見し、早期に治療しなくてはなりません。そして、何よりも、皆さんが緑内障のことを知り、目の健康を意識するようにならなくてはならないのです。特に注意すべきは、緑内障の患者さんが家系内にいる方、低血圧・冷え性などをお持ちの方、中等度以上の近視がある方(特に小学生低学年の時に眼鏡だった方)、就寝時にいびきをかいている方です。頻度が多いのに、本当に自覚症状が乏しく、既に発症していても9割の方が気付けない恐ろしい病気です。40歳以上の方は、一度目の健診を受けることをお勧めします。健診でも視力と眼圧だけの検査も多いですので、是非眼底検査が出来る施設を選択されることをお勧めします。

【ノバルティス ファーマ株式会社 緑内障パンフレット 2019年より】

啓発活動(世界緑内障週間:2023年3月12日~3月18日)

 皆さんの意識を変えるべく、我々眼科医は、緑内障の存在を知ってもらう啓蒙啓発活動を行ってきました。世界的にもこの流れがあり、世界緑内障週間という国際的な啓発運動期間が毎年開催され、日本ではライトアッinグリーン運動が行われています。これは日本緑内障学会を主催として2015年から始まった運動で、全国の公共機関や医療機関などをグリーンでライトアップする運動です。2015年は全国で5カ所でしたが、2019年は約150カ所の施設で、2020年は278カ所と年々増え続けています。宮城県では東北大学病院、宮城県眼科医会、各眼科関連企業からなる眼疾患早期発見コンソーシアムの働きかけで、東北大学病院、中核病院、クリニック、薬局、企業オフィス、商店街、仙台放送の電波塔でライトアップします。2019年までは、3-6施設程度でしたが、コンソーシアム発足後の徐々に増えており、2022年は46施設と宮城県の広がり方は全国でも目立っています。

この活動をもっと知りたい方・緑内障市民公開講座を視聴されたい方

▼ライトアップinグリーン運動▼
ライトアップinグリーン運動
▼眼疾患早期発見コンソーシアム▼
眼疾患早期発見コンソーシアム|目の健康を守り、光を失う方をゼロに
執筆者
東北大学病院眼科 中澤徹 先生
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