先生の声
子どもの発達と絵本の読み聞かせ 

東北大学 土谷 公認心理師インタビュー

子どもの発達と絵本の読み聞かせについて、東北大学病院 小児科 土谷 真央 公認心理師にインタビューしました。


取材日:2020年12月16日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

幼児期の絵本の読み聞かせをオススメする理由は

 絵本の読み聞かせオススメする理由は、言葉を教えるため・言葉を覚えさせるためではなく、また物語を教えたり・理解させたりすることでもありません。
 読み聞かせを私たちがオススメしている理由は、「親子で絵本に親しんで、親子で会話をする時間を作る」ためです。

 親子で一緒に会話をする時間を楽しんでいただくと、お子さんが自分の好きなものに親御さんが反応してくれることが嬉しいので「もっと読んで!」とせがむようになってきます。
 そうして、もっと読んでいくと、お子さんの方から「これ何て読むの?」と文字に興味を持つようになってきます。そうしていると、「ひらがなを読む」や「ひらがなを書く」ということにも繋がってくるということが、読み聞かせの良いところです。

 (親御さんが)文字を読ませよう、絵本を読ませようとしてしまうと、お子さんは凄く嫌がります。
 絵本を読み聞かせしていく中で、お子さん達が自然に絵本に親しんで「もっと読んで」という風になることで絵本好きになって、「言葉を育む」ということに繋がっていきますので、親御さん達に安心して本を読み聞かせいただきたいなと思っています。

絵本の読み聞かせを始めるタイミングと時間は

 ママ・パパと言葉が出始める1歳半くらいから読むと良いとお伝えしています。
 小学校の3~4年生になったお子さんでも読み聞かせは、楽しんで聞いてくれるお子さんが凄く多いです。そのため、お子さん達が嫌がらない限りは、題材を替えながら読んでいくということをオススメしています。

 「毎日10分読み聞かせをして欲しい」とお伝えしていますが、恐らく読み始めた頃は、そんなに集中して読むことができないと思います。その時は、お子さんのペースに合わせていただいて、目安として「10分」で、短い絵本もあれば長い絵本もあると思いますので、お子さん達が聞いてくれる限り、大体10分程度になると思いますが、そのくらい読み聞かせてあげるといいかなと思います。

絵本の選び方のコツは

 最初は「絵だけでわかる」簡単な絵本をオススメしています。
 これは「親御さんが読んでいて疲れないもの」という風にもお伝えしていますが、お子さん達が絵だけで分かって、できるだけ文字の少ない絵本をオススメしています。
 またテーマは、お子さん達が興味を持つ内容から始めてほしいです。
 親御さん達が「これ読ませたいな」とか、「これが好きだな」という風に、親御さんたちの目線で選ぶことがどうしても多くなってしまいます。そのため、お子さんと一緒に図書館に行って選ぶ、一緒に本屋さんに行って選ぶということも良いかと思います。
 読み聞かせをしてくださいとお伝えすると、「うちの子は図鑑しか読まないんです」ということを教えて下さる親御さんが多いです。
 「図鑑もいいですよ」とはお伝えしていますが、図鑑になってしまうと、どうしてもお子さんが一人でじっと見て楽しむことが増えてしまうと思います。そのため、親御さんも一緒に写真を見ながら、お話ししながら、図鑑は読んでいただきたいなと思います。

絵本の読み聞かせがうまくいかない場合は

 親御さんから「ペラペラと絵本をめくってしまって読み終えられないんです」というようなお話を聞くことが多いです。
 私たちは、お子さんのペラペラとめくることに合わせて、お子さんの読む速度に合わせて読んであげましょうとお伝えしています。

 そのままペラペラとめくって、おしまいになるのではなく、お子さん達がペラペラめくる中で止まるページ、開いて「ここ気になるな」という様子を見せるページがあると思います。親御さんたちには、そのページについて一緒に話してあげることをお願いしています。

 お子さん達が興味を持ったところ、気になると思ったページに親御さんが反応してくれることを、お子さん達はとても喜びます。
 そうすると「物語の面白さ」が段々分かってきて、絵本を楽しむとか、物語を楽しむということに繋がってくると思います。

 ページの中で新しい発見をしたことも親御さんに伝えてくれるようになりますので、まずはお子さんが気になったところで止まるということをお伝えしています。

 また、「読み始めると、すぐにどっかに行っちゃって読み続けられません」というようなお話を聞くことも多いです。
 その場合は「絵本の内容が難しくないか?」ということを確認していただくようお願いしています。
なかなか読み続けられないという場合は、絵本の内容が難しすぎている場合があります。
お子さんの状況にあった絵本を読んであげるということが一つ。

 また読み方として、お子さん抱きかかえるようにして選んであげると、お子さんが本だけを見るようになります。そういう体勢で読んでみるということもオススメしています。

子どもが自分で絵本を読みたがる場合は

 少し本を読めるようになると、お子さん達は自分で読み聞かせをしたがります。
まずは、お子さんが自分で読み聞かせをしてくれるのを聞いてあげると良いと思います。
自分で読み聞かせをする、適当に読んだり、間違って読んだり、文字を覚えてしまって本を見ないで読み聞かせしてしまうことがあると思います。
 その場合も、まずは「そのまま聞いて」いただいて、その後で、親御さんがお子さんに読み聞かせして欲しいです。

 間違って読んでいる場合、その都度修正するのではなく、全部お子さんが読み終わったら、もう一度親御さんが読んであげて、「教える」というよりは「気づいてもらう」ために再度読み聞かせてあげると良いと言われています。

最後に

 絵本は何か教える、何かを覚えるために読むのではなく、親子さんから絵本を読んでもらえることを楽しいと感じ、相手と一緒に楽しむ時間を作るためのものです。さらに、スマートフォンやゲームを置いて、「親子で一緒にスキンシップを取る時間」としても活用していただきたいなと思っています。そのために、できるだけ「毎日10分」読み聞かせの時間を習慣とすると良いでしょう。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 来たる2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えます。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

 このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
東北大学病院 小児科
土谷 真央 公認心理師
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