先生の声
子どもの視力とメディア視聴

仙台医療センター 野呂先生インタビュー

 東日本大震災から10年。
 仙台医療センター眼科部長 野呂先生に、「子どもの視力の発達」やメディア視聴と視力の関係について伺いました。


取材日:2021年2月19日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

この10年で「子どもの眼」の健康について変化は

 デジタルデバイス、例えばスマートフォンやタブレット、パソコン、携帯ゲーム機の普及が進んで、近視の子どもの割合がだいぶ増えてきています。
 高校生では3人に2人、中学生では2人に1人、小学生では3人に1人、そして幼稚園児でも4人に1人が(視力が)1.0未満という、厚生省の最近のデータがあります。
 その大半が近視によるものと考えられています。

視力悪化および低年齢化の原因は

 原因としてはスマートフォン、タブレット、パソコン、携帯ゲーム機等の使用が増えてきているということが近視の増加の原因で、それが視力低下に影響していると思います。
 具体的にはデジタルデバイスを長時間使うことや、距離をかなり近づけて使用することが大きく影響していると思います。

 昨年、小学校・中学校・高校が3~5月の3ヶ月間、学校が休みになり、しかも外出禁止ということで、自宅でみんな自粛生活をしていたことが視力悪化に影響しています。実際、その3ヶ月を過ぎてから受診された患者さん方は、それ以前に受診した時と比べて、かなり近視の割合が増えていました。

デジタルデバイスとの上手な付き合い方は

 子ども達にとっても、デジタルデバイスは生活で引き離せないものになっていますので、使用を禁止するのはなかなか難しいと考えますので、適正に使うことが大切です。

・デジタルデバイスの使用時間を長くしないこと ・眼からの距離をあまり近くしないこと ・使用の合間に、少し休憩時間を入れること

これらに注意することが大事だと思います。

 使用時間は、中学生以上は約2時間まで、小学生は1時間以内が適正と考えられています。その中でも文字を読む場合と動画を観る場合では、やはり動画を観る方が眼に掛かる負担が大きくなります。
 例えば、タブレットやスマートフォン、パソコンは、眼との距離が近寄りがちなので、30cmほど離していただくと良いです。30cmというとA4の紙の縦の長さくらいですので、その距離を目安にしてください。

 休憩時間は、30分に1回程度を目安に入れてください。
 休憩する場合は、だいたい5m以上遠くを見ると眼の緊張がとれると言われていますから、一定時間、例えば30秒でも5メートル以上先を見ることが大切です。

 昔はブラウン管のテレビで、テレビだけを点けて周りを全部暗くして観たりする方がいました。現代では、周辺が暗い中で、スマホだけを明るくして観ることは、眼の負担がかなり大きくなります。理想的な環境は、使用するデバイスと周りの明るさを揃えることと言われています。

視力の発達とメガネの装着年齢

 視力の成長に関して、生まれた時は0.1も見えないような視力ですが、次第に視力が発達し、1歳では0.1~0.2、2歳で0.2~0.4、3歳児検診(3歳7カ月頃に受診)では、0.5を基準としていますが、凡そ0.6~0.8/4歳で0.8、そして5歳で1.0に達すると言われています。

 3歳児健診が眼科の場合は一番早い健診の時期になります。その時点で視力悪化に気が付かれるか、あるいは学校の就学前健診、学校に入ってからの健診で気が付かれるかとなります。

 原因や視力によって、メガネをかける時期は少し違いますが、近眼(近視)の場合は小学校低学年で0.3くらいがひとつの目安、高学年になりますと0.5~0.7くらいが検討の目安となります。教室の前方に行かないと黒板の文字が見えない視力になれば、やはりメガネ等が必要になってくると思います。
 弱視の場合は発見されたら出来るだけ早期にメガネをかけて訓練が必要になります。
 斜視の場合は、内斜視や外斜視等いろいろありますが、内斜視で遠視を伴っている場合には、だいたい早ければ1歳~2歳頃からメガネが必要になる場合があります。

 コンタクトレンズの場合は、メガネのように簡単に装着するわけにいきませんので、自分で出し入れや眼の調子が悪い時に装用しない判断が必要になるため、眼科医の場合はコンタクレンズの使用を中学生以上と考えている先生が多いと思います。
 ただ実際は小さい年齢から必要があってコンタクトレンズを使用している方もいますし、高校生以上と決めている眼科の先生もいらっしゃるので、それぞれの眼科の先生の判断にはなるかとは思います。

子どもの視力を守るために親が出来ることは

 お子さんだけではなくて「家族全体」で、デジタルデバイスの使用を考える、みんなで相談してルールを決めることが大切だと思います。
 視力低下の原因は、先程も言ったように近視が主な原因ですが、弱視や斜視、それ以外の疾患でも原因となる場合がありますので、気になることがありましたら、かかりつけの小児科の先生や近所の眼科の先生に相談していただければと思います。
 また3歳児健診、あるいは就学前の健診、学校健診も可能な限り受診し、その際に相談いただければと思います。

 普段の生活で、例えばテレビを観るときに、かなり近寄っていく、あるいは本を読むときにかなり寄せて観るというのは、近視が始まっている、強くなってきている可能性があります。それ以外では、顔を傾ける、顎を引く、片目を瞑る、眩しがる、眼をよくこする、よく転ぶ等、そういったことがあれば相談してもらえればと思います。

 今年度はコロナウイルスの影響で学校が休みとなり、オンライン授業等が一部始まるようになりました。学校の授業にタブレットを導入することが増えており、2021年4月から導入数が増えることになります。そうなると今までのデジタルデバイスの使用時間に加えて、また長時間使う機会が増えます。デジタルデバイスの使用の長時間化や使用するデバイスとの距離が近づくことで、眼には負担がかなり増えてくることになります。
 そのため、デジタルデバイスの使用に関しては一部の使用時間ではなくて、全体の使用時間に注意して、眼を大切にしていくことが必要かと思います。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えました。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

 このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
仙台医療センター眼科部長
野呂 充 先生
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