先生の声
うちの子 発達大丈夫かなと思ったら

仙台市 北部/南部発達相談支援センター 奈良先生インタビュー

東日本大震災から10年。
子どもを取り巻く環境の変化と、今後の課題について、仙台市 北部/南部発達相談支援センター主幹 小児科医の奈良 千恵子 先生にインタビューしました。


取材日:2021年2月2日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

子どもの発達に関して 多く寄せられる相談は

 お子さんが「言葉が遅い」「動きが激しい」「癇癪が多い」あとは「視線が合いにくい」といった、様々なご相談にいらっしゃる方がいます。
 ただ、これらの事は一見関係(共通点が)なさそうに見えますが、「生活のリズム」を整えてあげて情緒が安定してくるだけで随分改善してきます。
 まずは生活のリズムというところを見直していただけると良いと思います 。

子どもの生活リズムで心がけること事は

 お子さんは自分から「お腹すいた」と元気よく起きて来ますか?
 日本人は、成人の睡眠時間も世界各国の中でも短いということが報告されています。これに付随するようにお子さんの睡眠時間も、かなり短いことが分かっています。
 お子さんは睡眠時間が足りていると「お腹すいた!」と元気よく起きてきますので、その辺りを目安にして様子を見ていただければと思います。

 幼児だと昼寝を合わせて「10~13時間」、学齢になると「9~11時間」の睡眠時間が必要だと言われています。

 この話をすると、お母さん方は「こんなにいるの!?」と驚かれますが、お子さんによっても異なりますので、充分な睡眠時間であるかの判断目安として、元気よく「お腹すいた!」と起きてくるか、ということをお伝えするようにしています。

 睡眠のリズムは大切と、よく言われていますが、寝ている時間には成長に必要なホルモンが分泌されているということが分かってきています。そのため、睡眠のリズムを整えてあげることがお子さんの健やかな心身の成長のために、とても大切だと考えられています。

 睡眠のリズムを整えてあげるだけで情緒が安定し、お子さんが落ち着いてきたり、コミュニケーションがスムーズになってくることがあり、親御さんの心配事が解消される場合がよくあります。
 ただ頑張っても睡眠のリズムが整わない場合には他に原因がある場合がありますので、かかりつけの小児科の先生に相談をしてみてください。

「生活リズム」以外に気をつけたい事は

 急速なメディア機器の発達とコロナに対応するため、お家にいる時間が増えたことで、お子さんたちが「低年齢から長時間のメディア視聴」になってしまい、発達にも影響している事例が増えてきています。

 メディア視聴に関しては「時間を決めて楽しむ」ことが大切になってきています。
 子どもの場合には、実際に人と関わることで「コミュニケーションのスキル」が獲得されてきます。そのため、メディア視聴時間を決め、実際に人と関わって遊ぶ、また実際に具体的な物を扱って遊ぶという経験時間が減らないようすることが大切になってきます。

 また我慢すること、思い通りにならない時にアドバイスを受けて別のやり方で楽しむといった経験を積み重ねることが、子どもにはとても重要な経験になってきます。そういった時間を確保してあげるということも意識していただければ良いかと思います。お母さんやお父さんがしっかり関わってやりとりをして遊んであげることが大切になってきます。

小児期の発達について 親の関わり方は

 小児期の発達の問題というのは、親御さんの関わり方で大きく変わってきます。
 発達特性を持っているお子さんにみられる行動のひとつとして「目線がすぐ逸れてしまう」ということがあります。ちょっとだけ目線が合っても、すぐ逸れてしまう。また、そもそも人に関心を向けてこないので「目線があいにくい」というような様子がみられることがあります。

   ここで気を付けていただきたいのは、発達特性を持っているお子さんだけではなく、お母さん・お父さんが子供からの発信に気付いてくれない経験が積み重ねられている場合にも同様の行動が起きてしまうという点です。
 このようなことを防ぐためには「子供からの発信にしっかり反応してあげること」が大切です。「生活リズムを整える」「メディア子守にしない」という点に気を付け、ちゃんと親御さんが関わってあげる時間を増やすことで、親御さんの方に目線を向けてくれるようになります。

   このように生活習慣の乱れによって発達特性と同じような行動が見られるようになってしまうことがある点に注意が必要です。まずは「生活リズムを整えてあげる」だけで、行動が改善してくるかどうか様子を見ていただきたいと思います。

 また、多少の発達特性があっても、それを個性として生きていけるような力を育んであげることも大切になります。そのために大切なことは意外にも昔からの「丁寧な子育て」だということが分かってきています。
 「早寝・早起き・朝ごはん」、などの昔から言われていることに丁寧に関わってあげる事で、そういった力が育まれていきますので、取り組んでみてください。

 心配な事がある時には、身近な地域に相談場所がいくつかありますので、そういった場所を訪ねてください。一人で悩まないで、皆さんの知恵をいただいて、協力して子ども達を育てていければよいと思います。

子どもの発達に関して不安がある時は

 お子さんの成長発達は、非常に個人差が大きく、一人一人異なってくるものです。
 初めての子育ての場合には、やはり不安になる事が多いかもしれません。地域には子育ての相談ができる場所がたくさんありますので、そういった場所を利用していただければと思います。
 役所では家庭健康課や健康福祉課などで相談できます。また、保育所にも地域の子育て支援センターといったものが設置されている場所があり、相談できます。その他にも児童館などでも、幼児期の子育ての相談ができる場がありますので、そういった場所を上手に利用して、相談していただけるとよいかと思います。
 ベテランの保健師さんや保育士さん、地域の方々がいますので、「悩んでいるのは自分達だけではない」と分かるだけでも安心できますし、たくさんの子育ての知恵といったものをお話しいただけると思いますので、尋ねてみていただけると良いと思います。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 来たる2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えます。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
仙台市 北部/南部発達相談支援センター主幹 小児科医
奈良 千恵子 先生
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