先生の声
子どもの肥満 ~なぜ悪い? どうすれば?~

東北大学 三浦先生インタビュー

東日本大震災から10年。
子どもの肥満状況について、東北大学病院 小児科 三浦啓暢 先生にインタビューしました。


取材日:2021年1月5日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

宮城県の子どもの肥満状況は?

 宮城県では小児のほぼ全ての年齢において、全国でもトップレベルで肥満の割合が多い地域とされています。
 全国的に肥満のお子さんは1970年代後半から増加傾向にありますが、2000年あたりをピークに、その後減少し、近年は横ばいになっています。
 宮城県においても肥満のお子さんの割合は、ここ15年ほどの間にわずかに減少してきましたが、男女共にトップクラスに多い状況は変わりありません。小中学生全体を通してみると実に10人に1人が肥満という問題に直面しています。

小児期の肥満による具体的な影響は?

 小児期に肥満になると、様々な医学的異常や健康障害が出現します。
 例えば、身体的問題で言えば高血圧・睡眠時無呼吸・2型糖尿病・肝障害・脂質異常・動脈硬化・運動機能の障害などです。そのまま成長すると成人肥満に移行し、2型糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病の発症リスクや死亡リスクの増加に関与します。
また精神的社会的問題として、自己像の歪み・自尊心の低下・いじめ・不登校などにも繋がります。

 小児期の肥満は身体の病気だけではなく心の不調を引き起こし、また将来的な健康の大きなリスクになるということです。

小児期の肥満の原因は?

 まずは食習慣です。
 例えば食事のメニューのバランスが悪い、朝食を食べない、おやつの内容や習慣的に飲んでいる飲料の内容はどうか。具体的にはスナック菓子や清涼飲料水に偏っているか?これらが原因となります。

 次に運動習慣です。
 日頃から適度にからだを動かしていることが重要です。

 そして生活リズムです。
 夜更かしは子どもの成長を妨げるだけでなく、肥満の原因にもなります。 また、乳幼児期早期からの急激な体重増加は特殊な病気が隠れている可能性もありますので、一度かかりつけの小児科にご相談下さい。

生活習慣以外の小児期の肥満原因は?

 実は生まれる前の生活習慣も肥満に影響を及ぼします。
 DOHaD(ドハド)という、胎児期や乳児期の環境が成長後の健康や様々な病気の発症に影響を及ぼすという概念です。

 妊娠されているお母さんの栄養状態が悪かったり、喫煙したりなど、赤ちゃんがお腹の中で受けたストレスが生まれてからの健康状態にも影響を与える可能性が言われています。
 また、小さく生まれた/大きく生まれたお子さんは、幼児期以降に肥満になりやすい傾向があります。

 妊娠中のお母さん(の食習慣)が、子どもの食の好みに影響を与えるという報告も動物実験で報告されています。出産を控えるお母さんは自身の健康状態・栄養状態を整え、お母さん自身や一緒に暮らすご家族の禁煙など、お子さんの健康リスクを減らしてあげることができるかもしれません。

肥満対策は、いつから行うべきか?

 WHO の指針によれば、幼児期は高血圧・喫煙・2型糖尿病・運動不足・肥満に対し、予防効果が期待できる重要な介入時期だと言われています。
 幼児期にあたる5~6歳までの小さなお子さんの生活習慣は、大人の生活習慣に密接に関連します。
 30歳代の内臓脂肪型肥満と幼児の急激な体重増加の関与が明らかになっています。小さい頃に肥満だったお子さんは、小中学生や大人になっても肥満のままでいる傾向があります。
 また授乳期のお母さんの食べ物は、子どもの食べ物の好みに関連するといった報告もあります。思春期や大人になってから染み付いてしまった食生活や運動習慣を変えることには、とても大きな努力が必要になります。

 小さい頃から食事や運動生活習慣に気をつけ、お子さんが肥満にならないよう、家族みんなで気をつけてあげることが大切になります。

最後に

 肥満の原因は小さい頃からの習慣の積み重ねになります。
 好き嫌いができないよう離乳食が完成する頃から食育を意識し、日々の遊びを通してからだ全体を動かし、早寝早起きの規則正しい生活リズムを習慣付けさせてあげてください。
 また妊娠中や授乳期のお母さんの食習慣・生活習慣にも気をつけていただきたいと思います 。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 来たる2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えます。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

 このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
東北大学病院 小児科
菅野 潤子先生、三浦 啓暢先生、鈴木 智尚先生
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