先生の声
上手に褒めて育てるためのポイント

仙台市 北部/南部発達相談支援センター 奈良先生インタビュー

子どもを「褒めて育てる」効果やポイントについて、仙台市 北部/南部発達相談支援センター主幹 小児科医の奈良 千恵子 先生にインタビューしました。


取材日:2021年2月2日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

「褒める」事の子どもへの影響は

 誰でも褒められると嬉しいですね。子供なら尚更です。
 褒める事は「自己有能感」を育む大切なプロセスと言われています。「褒めて育てる」という事は昔から言われている子育てのコツでもあります。ただ、日常生活忙しい中で褒めてばかりいられないと思う場面も多々あるのではないかと思います。だからこそ言い伝えられているのではないかと思います。

 いろいろな事を「きちんと躾なければ」と親御さんが思えば思うほど、どうしてもキツイ声掛けになってしまいがちです。また子ども達は忙しい時に限って何かをやらかしてしまうという事がよくあります。子育て経験している方ならば誰でも何回かは「忙しい時に限って」と溜め息をついた経験があるのではないかと思います。
 近年、核家族化や共働きで親御さんが忙しくなってきています。そういった社会情勢の変化やコロナ禍で近所付き合いも減ってしまっている事で、お母さんが叱り飛ばしてしまった後にフォローする人が少なくなっています。
 お母さんが叱っても、おじいちゃん・おばあちゃんや近所の方が子ども達の話を聞いてくれると子どもの気持ちが落ち着いて来る事があります。それから子供の新しい良い面を見出して教えてくれて、保護者の方に気づきを促してくれる事もあります。そういった出会いが少なくなってきてしまっている事が、ちょっと心配なところです。

 地域の大人達が皆で、お子さんを育てるということを意識していただけると良いと思っています。

「褒め方」のコツは

 「望ましい事をした・出来た」時に褒める事は、誰でも忘れないと思いますが、「やろうとした・やり始めた・やっている最中」もぜひ褒める言葉がけをしていただきたいと思います。

 例えば、「お片付けしてね」とお子さんに声かけをして玩具を手にした時、すぐに「すぐお片付けして偉いね」と褒めてしまいます。お子さん自身は他の遊び思いついていたかもしれませんが、親御さんに褒められると「お母さんは、すぐちゃんと片付けるって思ってくれている・信用してくれているんだ」という形でメッセージが伝わります。
 このように「ちゃんとやれると信用されている」という想いが伝わると、お子さんは望ましい行動をする方向に動機づけられていきます。この意味でも褒める回数を増やす事がとても大切になります。

 「褒めるところが見つからない」という時は、まず「実況中継」という事から取り組んでみてください。
 「靴下履いたんだね」と言うだけでも、お子さんが頑張っている事に気づいてるよ、注目しているよと伝わります。さらに「もう靴下履いたんだね、早いね」と言えば立派に褒めた形になります。この時に、声のトーンや表情も大切にしていただきたいと思います。

子どもがわざと怒られるような事をする時は

 子どもがわざと怒られるような事をしてしまう時というのは「注目して欲しい」時です。
 つまり、褒められるという形での良い注目が減ってしまっている時です。そのため、褒めるということを意識して増やしていただくとわざわざ悪い事をする必要がなくなり、わざと怒られるようなことをしなくなってきます。

「叱り方」のコツは

 「子どもが嘘ついたり、ごまかしたりする」という相談をよく受ける事があります。
 嘘をついたり、ごまかしたりすることが増えてきた時は「叱り過ぎていないか」を見直していただきたいと思います。
 嘘ついたり、ごまかしたりする時は子ども自身も「その行動がまずかった」ということに気づいています。叱られると思うからこそ隠したくなってしまっているのです。他の人に迷惑をかけるような嘘でなければ叱る必要はありません。むしろ「褒めることを増やす」ということが大切な対策になってきます。
 いつも注意していることを、またやらかしたということもあるかと思いますが、そういう時も「叱り過ぎない」ことが大切になります。「どうしたらいいか分かってるよね?」と次は頑張れると信じているとメッセージを伝えてあげることがとても大切になります。出来ると信じてもらえていると思うと、お子さんは、そちらの方向で頑張ろうとしてくれます。是非、そのような声かけをしていただけたらと思います。

 叱る時に「なぜいけないことか」と伝えなければならないと思ってしまう親御さんも多いかと思いますが、その説明が理解できるようになるのは、だいたい5歳過ぎてからです。それまでの年齢では、その行動が「良いことか悪いことか」だけが伝われば良いので「短く叱る」ということ事がコツになります。
 危険なことをしてしまった時は、しっかりと目線を合わせて、ちょっと怖い顔をして子どもが「マズい」という表情になるまで睨みつけていてください。
 また危険なこと以外の減らしたいなと思う行動の時には、なるべく叱らないような形で気付かせてあげることがポイントになってきます。この場合には「褒める」形で気付かせる方法をとります。

 例えば、着替えの途中で他の事に気を取られている場面。そういった時は「もう T シャツに着替えたんだね」と出来ているところまでを褒めてしまいます。その褒められた言葉で、そういえば着替えの途中だったと気付いてくれれば良いので、「褒めて気づかせる」ということを意識していただきたいと思います。

 先ほど申し上げたように「褒める回数を増やす」という対応が結果として、叱られる・注意されることを減らすことに繋がっていきます。

 やはり日常的に関わることが多いのは、お母さんになると思います。日常的な事はお母さん、お父さんは非日常的な事があった時に出てきてビシッと叱るような役割分担をしていただければと思います。また、上手に「ごめんなさい」が言えない時もあるかと思いますので、そういった時には「お母さんと一緒に行って、お父さんに謝ろう」といった形で謝ることを教えてくことも必要になると思います。

褒めて育てるためのポイントは

 子ども達は大好きなお母さん・お父さんに、たくさん注目してもらいたいと思っています。 「褒める」という形でたくさん良い注目を浴びていると情緒が安定して、次も頑張ろうという意欲に繋がっていきます。

 子育てやお仕事頑張っているお母さん・お父さんも「お互いに褒める」ということを意識していただければ良いと思います。

 子どもの成長というのは、あっという間です。子育ての時期は、とにかく毎日忙しいので無我夢中で過ごしている内に、いつの間にか子ども達は大きくなってしまいます。
 無邪気に遊んでいる姿や可愛い寝顔を見せてくれる時間は、ほんの数年間です。今この瞬間の、可愛い子ども達の姿が見られる時間を大切に、子育てを楽しんでいただけたらと思います。

 お母さん・お父さんの笑顔が溢れると家庭の中に笑顔が増えてきます。そして、出来ると信じてくれている人がいる事が子ども達を次の色々な事にチャレンジする勇気をもたらしてくれます。いつどこでも「出来ると信じているよ」というメッセージを送ってあげて、子どもの成長を応援していただけたら良いと思います。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 来たる2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えます。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
仙台市 北部/南部発達相談支援センター主幹 小児科医
奈良 千恵子 先生
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