先生の声
子どもの発達とお手伝い

東北大学 土谷 公認心理師インタビュー

子どもの発達とお手伝いについて、東北大学病院 小児科 土谷 真央 公認心理師にインタビューしました。


取材日:2020年12月16日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

幼児期の「お手伝い」の効果は

 お手伝いには複数の効果があると言われています。

 1つ目は「手先の訓練」になるということです。
洗濯物を畳む時に、角と角合わせて畳んだり、野菜を洗って切ったりということ。それからテーブルを拭くことは全て「手先を使うこと」になっています。
不器用なお子さんや字をきれいに書くことが苦手だというお子さんにはお手伝いを勧めています。

 お手伝いは、ちょっと面倒くさいものです。お手伝いを毎日続けていると、ちょっと面倒くさいものっていうのを「こなしていく力」が身に付きます。
気分でやるお子さんは、なかなか「こなしていく力」が身につかないので、簡単なことでも良いので毎日お手伝いを続けることで、面倒くさいことを「こなす力」が身に付きます。

 これは小学生・中学生になっても、お手伝いを勧める理由です。面倒臭いものを「こなす力」が大きくなった時にも、面倒な事をやれる力に繋がってきます。

 また「ありがとう」と言われて終わることができますので、お子さん達も嬉しい気持ちで終わることができます。
 面倒くさいものをこなすこと、お手伝いすることは「ありがとう」で終わることができるので、「家族から必要とされている」という気持ちが育つこと、「自己肯定感」を育てることにも繋がってきます。

 さらに、 お手伝いすることで、計画を立てて段取りを組む「段取り力」も身に付いてきます。
小さい頃は、まずは「ゴミをポイしてきて」「新聞を持ってきて」ということから始まり、もう少し大きくなると「おもちゃを片付ける」等の繰り返しある行動が取れるようになってきます。さらに大きくなると「洗濯物を取り込んで畳む」「布巾を絞ってテーブルを拭く」ということができるようになってきます。

 こういったお手伝いは年齢が上がっても「一人暮らしの準備」として続けて欲しいです。
一人で生活することに十分な能力をお手伝いで身に付けることができます。

 お手伝いは、家事を「学習する」ことです。
お手伝いをしていくと段取り力が身に付いて、「計画を立てて学習する」という力にも繋がっていきます。

お手伝いの始め方は

 簡単なお手伝いであれば、1歳半頃から始めることができます。
 小学校に上がる前までに自分からお手伝いをすると言うようになることが目標のひとつです。

例えば、テーブル拭きであれば、お子さん一人で行うのではなく、お母さんが手を置いて一緒にテーブルを拭くということ、またお母さんが後ろに回って一緒にやることが必要になってきます。最初は、親御さんがとっても大変だと思いますが、それを続けていくとお子さん達もやり方が分かって自分でできるようになっていきます。

 お子さんが「やりたいようにお手伝いをしちゃう」ということもあると思いますが、お父さん・お母さんのやり方を一緒にやって真似させる。やはり最初から一人では絶対に難しいと思いますので、必ず一緒に行っていただき、できたら「ありがとう」や「できたね!」と褒めてあげることがまた大事になってきます 。

お手伝いをお願いする時に注意することは

「叱りながらお手伝いをさせていないか」ということを確認して欲しいです。
 お子さん達は「怒られる」と思っては絶対に、お手伝いをしません。
褒められるためにお手伝いをするようになれば、お子さん達は喜んでお手伝いをしてくれると思います。

そうは言っても「褒める」ことは難しいことです。

 お手伝いをやってくれたこと、それからやろうとしてくれたこと、ちょっとでも努力してくれたことに対して「ありがとう」と伝えることから始めてみると良いと思います。

お手伝いで目指すことは

小学校に入るまでに出来て欲しいこと、小学校に入ってからも続けて欲しいことを3つ紹介します。

1つ目は、自ら進んでお手伝いができること。
2つ目は、家族の中で自分の役割がわかること。
3つ目は、自分のことは自分でやる習慣がついていることです。

年齢が高くなってもお手伝いは非常に重要なことです。
それは将来一人暮らしができるということにも繋がっていきます。

 最初は、お父さん・お母さんが一緒になってやらなければならないので、非常に親御さんが大変だと思いますが、一緒にやれたということを「まずは褒める」ことから始めてもらいたいなと思います。
 家事には社会で自立していくための重要な要素・必要な要素がいくつも入っています。
小さい頃から習慣づけることが、お子さんの良い育ちに繋がります。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 来たる2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えます。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
東北大学病院 小児科
土谷 真央 公認心理師
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