先生の声
子どもの発達と、耳の健康

一般社団法人 仙台市医師会 理事、池田クリニック 理事長 綿谷秀弥 先生インタビュー

 東日本大震災から10年。
 一般社団法人 仙台市医師会 理事、池田クリニック 理事長 綿谷 秀弥 先生に、子どもの発達と、耳の健康について伺いました。


取材日:2021年2月18日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

赤ちゃんの耳・聴力の成長は

 生まれたときには、ある程度の音が聴こえていると言われております。
 音に対する反応はありますが、果たして母親(の声)をどのようにして判別しているかということは諸説ありますが、「乳児」の頃から判別しているのではないかと言われております。
 新生児聴力検査という検査が行われていますが、乳児期から幼児期の「聴こえ」が非常に心身の発達にも重要であるということが最近分かってきております。

子どもの耳・聴力の成長に家族が気を付けることは

 常に過大な音を聴かないということが非常に重要になっています。普通のテレビの音や音楽はもちろん問題ございません。過大な音を聴きますと、その時は問題なくても、残りの長い人生の中で問題が出てくることもあるため、大きな音は避けられたほうが宜しいかと思います。

 お子さんの年齢によっても違いますが、右から聴いた場合と、左から喋りかけた場合で反応が違う。また1歳頃になりますと、いつも右耳を前に出している、左耳を前に出しているなど、何気ない所作に注意して観察してください。ご心配であれば、一度専門医を受診されることをおすすめします。

 生まれたときは正常であっても、例えば中耳炎、特に滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)が、片側だけに症状がある場合は本人も気づきません。本人も片耳の場合は、音に対して聴こえていると思っていますので気づきません。
 小学校に入りますと、かなりの方が気づくようになります。 スマホやメディアを使用する際、イヤホンを使うと「片方の耳しか聴こえない」と本人が言うことで、受診にいらっしゃる方もいます。  通常は、小学校に入るまでの未就学児の間、なかなか親御さんも本人も気づかないということをご理解いただければ良いと思います。

 我々医師や親御さんよりもっと良く観察出来る方は、保育園や幼稚園の先生です。
 同じ年齢の方を多数、同じような状況下で、同じように話しかけることを何回も行うため、「この子は少し音に対する反応が悪いんじゃないか」という異常を割と気づかれる先生が多いです。ご心配な親御さんは、保育園や幼稚園の先生に一度「うちの子どもはどうか」ということをお聞きになるのも良いかと思います。

 また「鼻」が悪くなりますと、鼻と耳を結ぶ管があり、それを介して中耳炎になりやすいので、非常に鼻が詰まっているなどの違和感がある場合、かかりつけの小児科の先生と相談された後でも結構ですが、一度耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。

「子どもの耳の健康」についてこの10年で変わったことは

 この10年間、お母様・お父様の世代が生まれた時、物心ついた時から携帯電話やスマホ等に接しており、それらのメディアが身近にあることが当たり前の世代に入っています。
 そういった中で、どのようにメディアと接するべきか、接したほうが良いかと、いろいろ意見はございますが、今更メディアを取り上げて「使っちゃいけないよ」ということは現実的には不可能だと思います。やはりうまく付き合っていくことが重要なのではないかと考えています。
 私個人的な意見ですが、車の運転と同じようなもので、やはり1時間やったら少なくとも10分程度は休むということ、また過度な時間使用させないというような、ルール作りをご家庭内でしていただくのが宜しいかと思います。

 さらに過度な音響で聴いていますと、それに対して内耳が少し障害を受ける場合があります。だいたいの場合は急性疾患で、その行為を止めれば元に戻ることが多いですが、ごく一部には慢性化して不可逆的な変化、元に戻らない場合もあると言われています。
 昨今、テレワークによりイヤホンを使って家庭で仕事をなさる方が出てきて、イヤホンの使いすぎによる外耳炎が非常に出てきております。これに関しては、イヤホンではなくて、ヘッドホンを使用すると治る場合もございますので、ヘッドホンを使って外耳炎を避けることが重要だと思います。

 いま、新生児聴力スクリーニング検査を、お子さんの出生時に9割以上の方が受診されています。この検査で早期から聴力障害が見分けることが出来てきました。それによって、早期から人工内耳などの医療介入することが標準的な治療となっております。

最後に

 「聴覚」は五感の中でも、「視覚」とともに会話、言語発達、コミュニケーション学習に不可欠なものです。
 今は新生児聴力検査で、早期から見つけることが出来ますから、検診の機会を決して逃すことなく、しっかり受けていただくこと。また、新生児聴力検査で正常であっても、その後に鼻や扁桃腺、中耳炎の原因により難聴になる方もいらっしゃいます。そのため、特に未就学児の間は様子がおかしいなと思ったら早めに耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめしております。

 当然、刺激が無くなりますと「発達が遅れる」、これは当たり前ですね。さらに耳の病気で、片方の耳に刺激が少ない場合も、将来的に内耳の病気は治っても難聴だけが残ってしまう場合もあります。
 「使っているほうが発達する」ということは間違いないことです。やはり早期の治療介入が必要だということを理解していただきたいです。

 親御さんにはとにかく愛情を持って、普段の生活の中で「おかしいな」と思うことがないかということを注意深く観察していただきたいです。おかしいなと思った時は、まずは小児科のかかりつけの先生、小児科専門医の先生でも良いので相談されて、必要であれば耳鼻咽喉科を受診していただくことが良いと思います。

「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」

 2021年3月11日で東日本大震災から10年を迎えました。
 そこで減災情報の風化を防ぐため、また新型コロナウイルス感染症の流行による健康情報伝達の不足を懸念し、次世代を担う子供たちを持つ両親・家族を対象に、「親子で学ぶ、ヘルスケア~これからの10年に私たちができること~」をタイトルとした啓発キャンペーンを実施いたします。

 このキャンペーンは、東北大学病院、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、仙台市医師会、仙台放送の共同事業として、2020年12月より宮城県内で各種プログラムを展開いたします。

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執筆者
一般社団法人 仙台市医師会 理事、池田クリニック 理事長
綿谷 秀弥 先生
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