先生の声
子どものお口の健康 ~虫歯編~

東北大学 山田先生インタビュー

東日本大震災から10年。
宮城県における、子どもの口腔衛生について、東北大学病院 小児歯科 科長 山田 亜矢 先生にインタビューしました。


取材日:2021年1月8日
※ウイルス感染予防に配慮して取材しております。

下記にインタビューの内容をテキスト化しております。
動画が見難い場合は、下記のテキスト版でご覧ください。

子どもの口腔衛生と災害の関連性は

 宮城県は子どもの虫歯や肥満が非常に多く、12歳児の一人平均虫歯本数は、震災前は全国ワースト2でした。震災後、さらに増加することが心配されましたが、様々な働きかけによって防止することができました。
 しかしながら、まだ全国平均には届かない状況が続いています。

 東日本大震災から10年を迎えようとしている今、新型コロナウイルス感染症によって私たちの生活は一変しました。自然災害とウイルス感染症、この二つには「子どものお口の健康」に関連することで共通点があります。どちらも生活のリズムが乱れ、外出の自粛を余儀なくされたことです 。

生活リズムや外出控えと「虫歯」の関係性は

 子どもの健康的な発育には、睡眠や食事、生活習慣が大切です。これは小児歯科においても共通しています。
 虫歯予防には生活習慣が重要ですが、私たち歯科医師が治療しても、虫歯の原因となった生活習慣に改善が見られなければ虫歯を繰り返してしまいます。
 生活のリズムが乱れると、食事やおやつは不規則となり、ダラダラ食べたり飲んだりしてしまいます。また歯磨きも忘れがちになってしまいます。
 さらに、外出の自粛は運動不足になるだけでなく、日光に当たる時間の減少、ゲーム・スマホで遊ぶ時間やテレビ・インターネットを必要以上に視聴してしまうことになります。  そうすると歯や骨の形成に悪影響を与え、姿勢も悪くなることで虫歯のリスクを高め、お口の機能に問題を生じる原因となってしまいます。
 会話の機会も減っていて、マスクの中での口での呼吸も、唾液によるお口の自浄作用を低下させ、虫歯のリスクが高まっています。

気を付けていても虫歯になってしまう理由は

 「歯磨きもしている。食べ物や飲み物も気をつけている。」それでも虫歯になってしまったという経験をされた親御さんも多いかと思います。
 実は、乳歯や永久歯の歯の形成不全が増えているのです。歯の形成不全とは歯が形成される時期に何らかの影響を受けることによって歯が弱くなることです。
 特に最近「MIH」と呼ばれる永久歯の前歯の部分と奥歯の部分に形成不全が見られることが多くなっています。日本では約10~20%のお子さん達にMIHが見られています。

 これらの歯の形成不全が増加した原因の一つとして紫外線を極度に避ける生活が挙げられています。

 骨や歯が形成されるためにはカルシウムが必要なことはよく知られていますが、このカルシウムが腸管から吸収される際にビタミンDという栄養素が必要となります。ビタミン D の20%は食べ物から80%は紫外線を浴びることによって皮膚で生成されています。
 乳歯は妊娠7週頃から形成を始め、4ヶ月頃に硬くなり始める「石灰化」が始まります。この頃、永久歯の「前歯」と「6歳臼歯」が形成を始め、出生と同時に石灰化が開始されます。

 つまり、胎児期/乳児期に強い歯になるか決まる歯の種類があるということになります。
 虫歯予防は、既にこの時期から始まっています。

 ビタミン D は妊婦さんや胎児、乳幼児にとって、歯の形成に必要な栄養素となります。
 しかし、実際は紫外線を避ける生活だけでなく、食物アレルギーなどで食べ物の制限や魚の摂取が減っていることなども影響していると考えられます。日本人の妊婦さんの60%にビタミン D が欠乏しているとの報告もあります。
 1日に必要なビタミン D を皮膚で生成するためには、地域によっても異なりますが、「夏だと5分以上/冬であれば30分以上」日光に当たることが推奨されています。
 また、鮭やイワシなどの魚類やキノコ類などビタミン D を多く含む食品や栄養のバランスのとれた栄養摂取に努めることも大切です。

乳歯を虫歯にしないためには

 できれば歯が生え始めたら歯科を受診することをお勧めします。遅くとも、奥歯が生える頃には歯科を受診し、適切な処置を受け、定期的な管理を受けることをお勧めします。

 ちなみに仙台市では2015年から「3歳児カリエスフリー85プロジェクト」が実施されています。これは、2022年度までに「虫歯のない3歳児を85%以上にする」というものです。歯が生え始めてから間もない8ヶ月・9ヶ月頃から歯科を受診し、定期管理を受けるようにお勧めしています。

 虫歯は生活習慣病なので小さい頃からお口の管理に興味を持たせ定期検診を習慣化することで将来の全身の健康に繋がると考えています。

※参考「3歳児カリエスフリー85プロジェクト」※令和3年3月末日まで

日頃から出来る虫歯予防法は

 虫歯というのは、細菌が砂糖を餌として酸を出し、歯を溶かしておきます。そこで、虫歯の予防には、それらの原因を除去することが重要になります。
 虫歯の予防法について、これから三つお話したいと思います。

1. 虫歯の原因となる細菌の数を減らすこと
 このためには、細菌の住処や餌となる「歯垢」や「食べかす」を歯磨きで除去しておくことが重要です。また細菌の住処である虫歯を治療して治しておくことも大切です。
 歯磨きをするのはもちろんですが、糸状のフロスと呼ばれる清掃具を用いて、歯と歯の間の食べかすを除去しておくことも大切です。

 歯磨きを嫌がるお子さんも多いので、歯磨きのトレーニングは「歯が生え始める前」から始めましょう。お口に歯ブラシを入れることに慣れるよう、清潔な手でお口の周りや歯茎を触ります。歯が生えてきたら清潔なガーゼを水で濡らして優しく拭いてあげます。

 小さい頃からの歯磨きは虫歯予防だけでなく、手の運動の発達にも重要です。しかし、乳幼児期は、特に歯ブラシでのお口の怪我などの事故が多いため、必ず親御さんの目の届くところで、動き回らないように注意し、安全性に配慮された子供用の歯ブラシを使うように気をつけましょう。

 乳幼児期の保護者による仕上げ磨きはもちろんですが、永久歯が生え変わる時期、特に6歳臼歯は虫歯のリスクが高いので、その時期までは仕上げ磨きを継続するようにしてほしいです。

2. 細菌が歯を溶かす酸の栄養源「砂糖の影響」を減らすこと
 これは砂糖の量や食べる頻度、おやつの種類などに関係します。歯はお口の中で菌が出す酸によって溶かされる一方で、唾液などによって「再石灰化」と呼ばれる、歯の修復が起きています。

 つまり、歯を溶かす時間が歯を修復する時間を超えてしまうと虫歯になってしまうわけです。そのため、時間を決めずにダラダラ食べたり飲んだり、お口の中に長く残っているようなおやつが虫歯のリスクを高くすることになります。

 例えば、飴はお口の中で長く舐めています。キャラメルやソフトキャンディは歯にくっつきやすく、ビスケットやクッキーなどは歯の溝などに貯まりやすいです。これらのおやつは虫歯のリスクが高いおやつに分類されます。  また砂糖の入った甘い飲み物は歯と歯の間に入り込んでいくため、歯と歯の間の虫歯を知らないうちに進行させてしまうことになります。

 最近「砂糖の量と虫歯には関係がない」という報道もされていますが、砂糖を多く取っているお子さんは虫歯が多い傾向があります。
 砂糖は依存性があり、肥満や糖尿病の原因にもなります。また砂糖を過剰摂取することによって、ビタミン B 1が不足し、「疲れ・だるさ・抵抗力の低下」などを来たします。

   お子さんに甘い食べ物や飲み物を与えることが本当に良いことなのか、一度考えてみて欲しいと思います。

3.歯を強くしておくことで虫歯のリスクを避けること
 歯を強くする方法としてはフッ化物の応用が挙げられます。
 歯科医院で塗布するもの、ご家庭や保育所・幼稚園・学校などで行う「フッ化物」のブクブクうがい。フッ化物を含む歯磨き粉やジェルスプレーなどの使用は年齢やお口の機能によって適切な応用法を選択します。

   また唾液をたくさん分泌することも虫歯予防には効果的です。特に寝ている間は唾液の分泌が低下し、お口を動かさないこともあり、自浄作用が働かなくなることで、虫歯のリスクが高くなります。
 そのため寝る前には、甘いおやつや飲み物を控え、しっかり汚れを除去し、フッ化物を利用することが虫歯のリスクを下げるために重要です。

 しかし、どんなに頑張っても、元々歯が弱かったり、歯の溝が複雑であると虫歯になってしまいます。そのため、歯科医院で溝を埋めるシーラントや歯が弱い部分に透明の歯面コーティング剤を塗布する専門的な処置をお勧めします。

 また虫歯予防の処置やフッ化物の応用、歯磨きの仕方は、子どもの年齢や歯の生え方、発達の程度によって適切な方法が異なります。小児歯科の「かかりつけ医」に定期的に受診することをお勧めします。

最後に

 お口には育ってきた生活環境が記録として残ります。お子さんが将来自信を持って歯を見せながら笑顔になれるようにしたいものです。
 小児科の呉先生が「良い生活習慣は一生の財産になる」とおっしゃっていましたが、まさに健康な歯は親御さんが与えることのできる貴重な財産の一つになると思います 。

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執筆者
東北大学病院 小児歯科 科長
山田 亜矢 先生
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